本研究は、日英およびその他の二言語の組み合わせをもつバイリンガルの言語習得と認知プロセスの違い・変化について心理・神経言語学的な観点から実験データ収集を行った。3年計画の最終年度は日英バイリンガルを中心に研究を進めた。1)昨年度、英University College London(UCL)にてfTCDを使って収集した日英バイリンガルの脳側性データと意味性および音韻性流暢性課題の結果についていくつかの分析方法を試みた。この機器を使っての言語研究はまだ発展途中のため、UCLの神経科学の研究者と論文発表にむけて準備中である。2)バイリンガルの二言語のバランスの変化を調査する指標としての意味性・音韻性流暢性課題の有効性を調査するため、日英バイリンガル児に当課題を改良し実施した。語産出は大人に比べて個人差が大きいが、長期的なデータ収集では一定の変化をみることができる。3)日英バイリンガルおよび英語母語話者が意味理解を重視しながら英語の文章を読む場合どのように単語レベルの誤り(スペリング・語形)または文レベルの誤り(文法)を処理するか眼球運動を測定した。2グループとも単語レベルには気づかないまたは無意識に反応する傾向があるが、文法の誤りには母語話者の方が反応する傾向が見られたが、バイリンガルの英語の習熟度に配慮する必要があり、結論づけるにはより多くの被験者を測定する必要がある。 本研究期間全体を通して調査した多様なバイリンガルについて総括すると、予測どおり言語習得時期、使用環境が認知プロセス(二言語の使用や流暢性)に影響を与えることが示唆された一方、二言語の言語知識が融合し影響しあうと仮定するマルチコンピテンスを支持する二言語の言語知識の度合いも要因と考えられる。しかし、指標となるタスクが存在しないため、二言語の能力やそのバランスの変化について測定できるタスクの開発を進めていきたい。
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