本研究は、日本語で育児を行うことを決めたタイ人の母親の言語使用に焦点をあてる。子供が1歳2ヶ月から2歳半までのビデオ・データ を分析した結果、母親は日本語を使用することを決めたにもかかわらず母語のタイ語と第二言語である英語を折に触れて使用し、特にタイ語の幼児語や談話標識を多用することによって、子供の断続的なタイ語の発話行為が見られた。母親は日本語をほぼ正確に使用したが、子供の日本語には更に誤用が少なかった。母子双方に比較的多くの誤用が見られた助詞について分析した結果、両者の誤用の特徴は異なり、母親の言語インプット は子供の初期言語使用の正確性に負の影響 を与えないことが明確になった。
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