研究課題/領域番号 |
24720193
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
武黒 麻紀子 早稲田大学, 法学学術院, 准教授 (80434223)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 言語人類学 / 相互行為 / 石垣島 |
研究概要 |
2012年度は、相互行為をそれにかかわる人間の社会関係や人間を取り巻く生活環境中心の視点に立って考えるために、日常のさまざまな出来事(言語コミュニケーションや事件、歴史など)をいかに包括的にとらえそこから何を見出すかという大きなリサーチクエスチョンを掲げた。沖縄県石垣島の相互行為の言語人類学的実証分析を通して、相互行為で使われる言語やジェスチャーが地域の生活環境や習慣に根ざしたものであるかを明らかにしていくために、家族や昔からの知人同士の相互行為(特に生活場面)のデータ収集を集中的に試みた。 そして、相互行為に出てくる言語やジェスチャーが人々の暮らす地域社会や地理的また文化的な環境とかかわっているのか考察しながら分析をしていった。特に注目したのは、環境や参与者同士が一体化しているように見られる現象(島人と移住者が空間表現の際に両者とも相手の視点を取り入れそれぞれの経験が潜在的に共有されている言語使用例、環境との一体化というposition takingを語ったインタビュー例、家族が同時に同じ姿勢・ジェスチャー動作をする例)で、それをPAL(Practice Approach to Language)の考え方を念頭において、日本英語学会ワークショップで発表した。 さらに、参与者同士がお互いの言語使用を影響しあい合わせていく現象"attunement"に焦点を当てた論文を作成し、学術雑誌への投稿を済ませた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
フィールドワークに赴くことができる時間が限られているため、データの収集にかなり手間取る。また、データの書き起こしの作業は、方言使用や高齢者の不明瞭な発音などもあり難航している。しかし、研究補助の助けを得て、これまで収集した全部のデータについて、大変質の高い書き起こしが完了した。これからは、データを詳細に検討し、分析していくことが必要になる。これまではおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
年度をかけて、果物農家の相互行為と頼母子講のデータを収集する。フィールドワーク地では、データ収集と同時にメモを取ったり、現場の状況を絵に書いたりしながら、時間が経った後にビデオを見ても相互行為の全体状況が分かるようにする。フィールドワークが終わる毎に書き起こし作業を行う。書き起こしは単純作業のようにみえて実は時間と労力をかけて行ってこそ重要な点が明らかになるものである。本研究では、研究補助の大学院生2名に加え研究代表者も書き起こし作業に中心的に携わる方法をとりたい。そのためにデータが肥大化し分析が間に合わなくなるような長期に渡る調査は避け、短期間のフィールドワークを数回行う。毎回限られた時間となるがゆえに疑問点は次のフィールドワークで集中的に扱う。アノテーションのような技術面での単純作業は時間を効率的に使うという目的から研究補助者に依頼する。 そして、方言使用と人間関係の交わり方について分析、考察する。そのために、メタ言語コメントのインタビューも行い、参与者の視点から石垣島での相互行為に不可欠あるいは選択可能な要素が何かを分析していく。それが地域環境や人間関係とどのように交わるのかを人類学的に考察する。結果は国際学会などで発表したのち、日本の学術雑誌へ投稿する。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究費のほとんどは、フィールドワークのための旅費、あるいはデータの書き起こしやアノテーション作業をする研究補助者への人件費として使用する。
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