研究期間全体を通じて、中国語教材と語彙のデータベースの構築を進め、そのことを通じて戦前の中国語教材の実態や基礎語彙研究の基礎研究を進めている。 今年度も引き続き中国語教材の収集並びに研究を進行した。開発中の中国語教材DBの構築では最終的な調整を行い、特定の単語がどういった地域や年代に分布しているのかを把握することができるLangLinkという機能を設計し、その結果を集計しグラフ化する機能を実装した。また研究代表者が関係する他のプロジェクトで語彙索引の作成ツールを共同開発し公開した。このツールは基礎語彙研究には欠かせないもので、『華語ピン字妙法』や『語言自邇集』など数種類の教材のテキストをディジタル化した上で、このツールを利用して全語彙索引を作成した。これらのDBや研究内容については7月に開催した外国語教育ワークショップや11月に開催された日本中国語学会で報告した。調査としては、10月に実施した中国での調査を通じて、『官話指南』のフランス語訳版のひとつに中国人による書き込みがあったことが判明した。これは明治期に日本人が執筆した中国語教材が他言語に展開し、さらにその教材が中国人の外国語学習教材として利用されている具体的な状況を裏付ける結果となった。この点については2015年度刊行予定の『官話指南の研究』(仮題)に成果として盛り込む予定である。また12月には国内有数の中国語教材のコレクションが日本大学(福島)の鱒澤研究室にあることを知り、氏の蔵書を調査させていただいた。結果として日本の戦前の中国語教育史、教材などに関する書籍が数千冊あり、過去数年間に収集、調査してきたものを凌駕する分量・内容であった。後日、氏の退職に伴い研究代表者が所属するアジア文化研究センターに寄贈いただくことになった。2015年2月より全図書の受け入れを行い、2015年度中の完成予定で目録を作成している。
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