研究課題/領域番号 |
24720195
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
小野 創 近畿大学, 理工学部, 准教授 (90510561)
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キーワード | 心理言語学 / 文処理 / 文法的依存関係 / 統合操作 / 干渉効果 / 日本語 / 束縛変項 / 作業記憶 |
研究概要 |
本研究課題に関わる実験結果を適格に解釈するために,文中の要素間がどのように統合されるのか,また要素間の依存関係が作業記憶内でどのように扱われているのかについて研究を進めた。一部は昨年度の研究結果の発展,また追試を実施し,得られた結果の再現性や安定性の検討を重視した。以下に今年度の成果についての概要を述べる。 (1)昨年度実施した項と述語の統合操作についての研究を土台にして,追試を進めた。具体的には要素がどのような言語学的素性に基づいて類似性を示すのかを調べることで,一般的認知機能に関わる作業記憶システムと言語処理システムの間のインターフェースの仕組みを探ることができた。特にこれまで理論的な研究において提案されてきたモデルが,リアルタイムの言語処理でも機能していることを明らかにし,今後このような取り組みがどの程度進めることができるのか非常に興味深い結果を得ることができた。(2)束縛変項についての研究成果は,文処理メカニズムがどのような入力をもとにどのような構造を仮定しているのかを探るのに大きな役割を果たした。条件間で構造的曖昧性が解消される位置を適切に統制し,依存関係構築の負荷という要因に絞って実験を実施することができた。ただし結果の解釈について複数のオフラインの実験を実施した上で丁寧な議論をすることが要求されると考えられるので,来年度の課題としたい。また,副詞イッタイをもちいたオフラインの実験については引き続き実験条件や刺激文のセットについて検討が必要であることが明らかになった。来年度の実験に向けて改善を図りたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
依存関係を対象にした実験研究について,実験の実施ならびに成果の発表を行うなど,研究の進展がみられる。複数の実験を通して課題も明らかになっており,それらを丁寧に考察し,改善しつつ行動実験と,脳波計測実験の準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
新たに研究協力者を雇用しながら,実験実施のペースを上げていく。実験刺激については外部の協力者にも意見をもらいながら,確実な成果が上げられるように丁寧な準備をすることが必要である。
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次年度の研究費の使用計画 |
情報収集をするための出張旅費について,関係学会が今年度は国内で多く,海外出張に行かずに十分な情報収集をすることができたこと。また,実験機材に関して,更に多くの機材の購入を計画していたが,実際には学内の機材を用いることができたため,費用が抑えられたという理由があった。 国外の研究者と情報交換を行うため,当初の予定よりも多くの旅費を使う。また,実験を実施するための補助者を雇用する計画である。
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