研究課題/領域番号 |
24720203
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研究機関 | 明海大学 |
研究代表者 |
中西 太郎 明海大学, 外国語学部, 講師 (30613666)
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キーワード | あいさつ / 待遇表現 / 方言 / 言語行動 / 地域差 / コミュニケーション / 定型表現 / 言語地理学 |
研究概要 |
申請者は、いまだ実態解明が十分でない、いくつかの選ばれた地域の出会いのあいさつ表現の使用実態を、待遇的観点を重視して記述し、その記述資料をもとにしてあいさつ表現変化のモデルを構築することを目的として、調査・研究を進めてきた。このモデルを構築することで、日本語あいさつ表現の変遷過程や、あいさつ表現使用実態の地域差が生じる理由が明らかになるのは勿論、日本語との対比で、多言語のあいさつ表現の変遷を扱うことも容易になり、言語普遍的なあいさつ表現変化の研究への挑戦が可能となる点で学術的意義が高い。 本事業の研究実施計画では、平成25年度は、あいさつ表現使用実態の性格が異なる、定型的表現使用地域10地点、非定型表現使用地域10地点、定型非定型中間地域30地点の使用実態の解明を予定していた。このうち、非定型表現使用地域に関しては、南琉球地方での調査を行い、使用実態のデータを得た。また、定型的表現使用地域に関しては、平成24年度に得た、宮城県沿岸部の被災地15市町村のデータを十分に活用するための検証調査を行い、定型的表現使用地域の使用実態のデータを得るに至った。 また、これまでに得た使用実態のデータをもとに、地域間のあいさつ表現使用実態と変化の方向の異なりについて考察を行い、非定型表現使用地域の使用実態と変化の方向性に多様性が見られるという、新知見を得るに至った。 研究成果の発表、還元については、個人として、あいさつ表現使用実態の地域差について論文をまとめるとともに、同分野の研究者と意見の交換を行い交流を深め、研究対象の拡大と深化を図り、最終的に論文集を刊行するに至った。さらに消滅の危機に瀕する宮城県沿岸部被災地15市町村のあいさつ表現のデータをWeb上で公開する取り組みにおいても、引き続きサポートを行い、調査結果の還元に努めている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
本研究では、いまだ実態解明が十分でない、いくつかの選ばれた地域の出会いのあいさつ表現の使用実態を、待遇的観点を重視して記述し、その記述資料をもとにしてあいさつ表現変化のモデルを構築することを目的としている。 本研究の目的である、あいさつ表現変化のモデルの構築には、あいさつ表現使用実態の性格が異なる、定型的表現使用地域、非定型表現使用地域の使用実態に加え、定型非定型中間地域の使用実態と変化の方向を見極める必要がある。 平成25年度は、当初予定していた調査地域に加え、平成24年度に行うことができなかった地域のあいさつ表現使用実態の調査も予定していた。だが、研究者の所属機関変更に伴う手続きで、平成25年4月~6月までの期間に助成金が使用できず、当初、その期間に予定していた、研究の進行にとって重要な、定型非定型中間地域調査を実施することができなかった。また、非定型表現使用地域の使用実態についても、調査の実施期間において、調査地域へ向かう交通機関の乱れがあり、研究の考察に十分な地域を調査することができなかった。 その点で、現時点で得られた資料のみから構築されるあいさつ表現変化のモデルは、不完全と言わざるを得ない。以上のような点から、研究計画が遅れていると言える。
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今後の研究の推進方策 |
本研究では、いまだ実態解明が十分でない、いくつかの選ばれた地域の出会いのあいさつ表現の使用実態を、待遇的観点を重視して記述し、その記述資料をもとにしてあいさつ表現変化のモデルを構築することを目的としている。 平成25年度は、定型非定型中間地域30地点の使用実態の解明を予定していた。また、非定型表現使用地域についても、一定程度の地域について、使用実態の資料を得るに至ったが、必ずしもそれで十分とは言えない。本研究の目的であるあいさつ表現変化のモデル構築には、これら、定型非定型中間地域、非定型表現使用地域、両方の使用実態と変化の方向を十分に見極める必要がある。 そこで、平成26年度には、定型非定型中間地域(北東北地方30地点)、非定型表現使用地域(南琉球地方5地点)、両方の使用実態の調査を実施し、データを収集する予定である。 さらに、それらのデータをもとに、それぞれの地域でのあいさつ表現変化の方向を見極め、それらの変化パターンに通じる要因を洗い出し、あいさつ表現変化のモデルの構築に至る。
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次年度の研究費の使用計画 |
研究者の所属機関変更に伴う手続きで、平成25年4月~6月までの期間に助成金が使用できず、当初その期間に予定していた、研究の進行にとって重要な調査を実施することができず、その後の研究計画も含めて、当初の予定の大幅な変更を強いられたため、未使用額が生じた。 そこで、平成26年度には、本研究の目的である、あいさつ表現変化のモデルの構築に必要な、定型非定型中間地域(北東北地方30地点)、非定型表現使用地域(南琉球地方5地点)、両方の使用実態の調査を実施することとし、未使用額はその経費と報告書の作成費に充てる。
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