本研究では,第一に,日本語諸方言における確認要求表現の記述をおこなう。第二に,この記述に基づいて,諸方言における確認要求表現の類型を明らかにする。本研究における類型とは,平叙文・疑問文のうちどちらに現れる形式で確認要求表現の諸用法を担うのかという観点からみた方言のタイプ分けを指す。例えば,ある方言では平叙文で主に用いられる形式を確認要求表現に用いることがあり,また別の方言では疑問文に現れる形式(主に否定疑問形式)を確認要求表現に用いる。この類型化を通して,日本語における平叙文と疑問文の連続体を記述するための枠組みを考えることが,本研究の最終的な目的である。 研究の最終年度である平成26年度は,前年度に考察した対照研究のための枠組みに基づいて日本語諸方言における確認要求表現の対照を試みた。具体的には次の2点にまとめられる。 1.要地方言の確認要求表現の対照研究:これまでに資料を収集した,奄美大島方言,島根/鳥取方言,関西方言,近畿周縁部の方言(三重県),岐阜方言,東京方言,弘前市方言の確認要求表現を,共通の枠組みを用いて対照した。その結果,平叙文側からは〈認識のギャップ〉という意味を介して確認要求表現に意味拡張をすること,疑問文側からは〈傾き〉という意味を介して確認要求表現に意味拡張をすることが明らかとなった。しかし一方で,〈認識のギャップ〉〈傾き〉の意味を持っていても確認要求表現にまで拡張しない例もあり,まだ課題も残されている。また,確認要求表現への意味拡張は,年齢差としても現れ,同じ形式を用いていても若年層になるほど新しい用法(談話的用法)を持つことが分かった。 2.確認要求表現例文集:これまでおこなった調査の例文とその文に対する適格性判断(およびそれに対するコメント)をすべてデータベース化した。他の研究者による分析・検証を可能にすると考える。
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