キリシタン版『羅葡日辞書』(1595刊)の日本語訳は、『日葡辞書』(1603-04刊)と比べると、臓器を表す語彙に見られるように訳語に違いがあり、また方言語彙など『日葡辞書』で使用が勧められていない語が含まれている。さらに漢字辞書『落葉集』(1598刊)も合わせて見ると、各辞書で語形が異なることがある。これらは当時の日本語の多様性とともに、各辞書がかなり個別に編纂されたことを示している。 通事用とみられる日葡対訳写本『南詞集解』では、方言を含むややくだけた日本語とピジン化されたポルトガル語が用いられており、キリシタン版とほぼ同じ時期・地域の成立ながら、さらに異なる言語様相を示している。
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