研究課題/領域番号 |
24720216
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
田村 敏広 静岡大学, 情報学部, 講師 (90547001)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | 情意的意味 / Get受動文 / 「てしまう」構文 / 事態の不可変性 |
研究概要 |
本研究は、これまでほとんど注目されることのなかった英語のGet受動文と「てしまう」構文に着目し、その情意的意味の出自と発生メカニズムを明らかにしようとする試みである。一見、意味的にも形式的にも関連性のない日英語の両形式が、同種の情意的意味を発生しうるのは決して偶然ではなく、両形式が何らかの意味特性を共有しているからではないかという仮説のもとに研究を進めている。 平成24年度は、両構文について、共時的観点から情意的意味の発生メカニズムを明らかにし、その妥当性を検討した。具体的には、Get受動文と「てしまう」構文の情意的意味が発生するデータの収集を行い、データベースを作成し、収集したデータをもとに、Get受動文と「てしまう」構文の情意的意味について、共時的観点から分析を行った。これまでGet受動文と「てしまう」構文の話者の感情表出である情意的意味は認められていたものの、その出自について言語学的な動機付けは明らかにされていなかった。しかし、本研究の計画に基づき、両構文の意味機能を分析したところ、類似したアスペクト的性質をもつ形式であることが明らかになった。 Get受動文と「てしまう」構文の構文的意味を分析した結果、両形式ともに「行為や状態変化といった動的事態を瞬時的なものとして提示し、その事態の発生に強い焦点を当てる形式である」というアスペクト的性質をもつ。この意味性質を基盤として、発生済みで変更できない事態であるという「事態の不可変性」をもつ構文形式として解釈され、情意的意味の発生に繋がるのだと結論づけられる。 両形式の意味的関係性を明確にしたこと、情意的意味の発生基盤を特定したことが平成24年度の中心的な研究実績である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「情意的意味の発生メカニズムの妥当性の検討(共時的分析)」であるフェイズ1、「情意的意味の慣習化プロセスの妥当性の証明(通時的分析)」であるフェイズ2、「結果指向性と情意的意味の関連性に関する言語一般性の検証」であるフェイズ3に区分した研究計画のうち、フェイズ1を終了し、フェイズ2へと進んでいる。 フェイズ1では計画していた分析が終了したことと、期待通りの結果が得られた点において、計画通り順調に進んだと考えている。平成24年度後半より取り組みを開始したフェイズ2は、通時的分析を取り入れ、情意的意味の発生時期の特定と使用(トークン)頻度の変遷を分析するため、時間を要する非常に手間のかかる作業になると思われる。但し、現時点までは順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、研究計画に設定した3つのフェイズのうち、「情意的意味の慣習化プロセスの妥当性の証明(通時的分析)」であるフェイズ2、「結果指向性と情意的意味の関連性に関する言語一般性の検証」であるフェイズ3に取り組む。平成25年度前半はフェイズ2を完遂し、後半には、英語のHot News Perfectなど結果指向性をもつ他の構文や、他言語の結果指向構文に注目し、結果指向性と情意的意味発生の関係が言語一般性をもつのかを検証する。そして、これにより得られた知見を論文にまとめ、国内誌及び国際誌へ投稿する予定である。 これらの達成に向けて、計画通りに分析を進めていく予定である。また国際学会等に参加し、最新の言語学的知見を取り入れ、それを自らの研究にフィードバックし、国際もしくは国内の学会等で積極的に発表していくことによって、研究の妥当性がより一層高まると考えられる。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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