平成25年度は、主格目的語の主格がC-Tにより付与されるメカニズムについて研究を行った。主格目的語を持つ言語である日本語において、どのようなメカニズムから目的語に主格が付与されるのかを現在の理論的枠組み(Chomsky 2008)のもと、複合動詞句内で格付与がどのように行われるのかを考察し、目的語に主格が付与される場合とされない場合の相違点を精査し、新しい分析を提案した。具体的には、次の3つの点を示した。1、日本語の複合動詞句内では例えPhaseが複数介在していても、1つのPhaseとして計算され、個別に計算されない。2、複合動詞句内における格の交替はPhase内で行われる操作の順序の違いから導き出されるものであり、別の追加の随意的操作などによるものではない。3、主格は普遍的にC-Tにより認可される。これにより、言語間相違、格の交替などに関して新たな可能性を追求した。 平成24年度に行ったアイスランド語の長距離再帰代名詞の研究で、目的語要素であってもC-TとAgreeの関係になれるということを示した。この研究は目的語要素が例えv-VとAgree関係になっていても、ある条件下で更にC-TとAgree関係になれることを示している。しかし、2013年11月に出版された日本語の主格目的語の研究論文ではそのような可能性を考慮することなく分析した。 その後はChomsky 2013で提案された新しい理論的枠組みのもとで、この研究がどのように捉え直せるかを現在も継続して考察している。 平成25年度の研究成果は、2013年11月に研究論文にて発表した。この研究を新しい理論的枠組みのもと捉え直した研究成果を2014年5月(平成26年度)にMITで行われたWAFL10にて発表した。
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