研究課題/領域番号 |
24720225
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 大阪国際大学 |
研究代表者 |
岩崎 真哉 大阪国際大学, 国際コミュニケーション学部, 講師 (90379214)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 主体性 / 文法化 / 認識様態性 / 構文化 / 認知言語学 |
研究概要 |
平成24年度の研究実績概要は以下の7点にまとめられる。 (i) まず認識様態性・主体性・文法化現象に関連する文献のリストを作成し、その網羅的な調査を行い、まとめた。特に、新しく出版された文献や、これまで手に入らなかった文献のリストアップを中心に行った。また、文献収集の際には、図書館、コーパス、インターネット等を利用した。 (ii) (i)の調査により抽出された文献・資料に関して、先行研究の問題点・説明されるべき事象・補足すべき箇所の指摘を行った。 (iii) 認識様態性・主体性・文法化の研究者ごとの定義づけを整理・分類した。 (iv) (iii)の整理・分類により、本研究課題における認識様態性・主体性・文法化の定義を検討した。 (v) 英語のused to be の文法化現象を裏付けるデータを提示するために、次のコーパスを使用した。 ・共時的コーパス:The Corpus of Contemporary American English (COCA) British National Corpus (BNC) ・通時的コーパス:Brown Corpus、LOB Corpus、Helsinki Corpus、The Corpus of Historical American English (COHA) 収集した言語データを、以下の観点から分類した。主語が1人称、2人称、3人称、有生・無生、肯定文であるか否定文であるか、動作動詞であるか状態動詞であるか、時間副詞との共起の有無。 (vi) used to be の文法化現象に関わる認知のメカニズムを説明するために、認知言語学で使用する概念の整理を行った。 (vii)日本語の副詞「おそらく」に関する文献の収集を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
その理由は以下の3点にまとめられる。 第一に、交付申請書の「研究の目的」として記載した、「認識様態性(epistemicity)・主体性(subjectivity)が、文法化(grammaticalization)という現象を捉える際に、先行研究が考えている以上に重要であることを示す」とう項目に対して、先行研究の調査からそれら3つの概念の重要性が明らかになりつつあるからである。例えば、Boye and Harder (2012)の論文では、文法化を用法基盤モデルから議論し、文法とは慣習的に付属的で、他の表現に対して二次的なものである表現から構成され、文法化はそのような表現に向かう通時的変化のことである、と述べている。これは文法化が文法全体にとって重要な概念であることを示唆している。 主体性に関しては、Narrog (2012)が法性(modality)との関連で扱っているが、その中でこれまでの先行研究での主体性をまとめ、いかに法性を考える際に主体性の概念が重要であるかを述べている。 第二に、「先行研究ではまだ指摘されていない文法化現象を、コーパスを用いて実証的に提示し、認知言語学の見地から理論的に説明する」という研究目的を立てたが、いわゆる「副詞的」に用いられていると考えられる、英語のused to be の例をさらにコーパスから収集し、その固定化が明らかであることを示しつつある。さらに、認知言語学の枠組みを用いて、それが理論的にどのように説明されるかを考察している。 そして第三に、日本語の副詞「おそらく」の発達過程を先行研究から考察し、データを着実に収集している。さらに、そのデータが認知言語学の理論ではどのように分析されるか、考察している途中である。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は次の8点にまとめられる。 (i) 平成24年度に行った文献調査で、リストに漏れた文献や新しく出版された文献をリストアップし、当該研究課題に関係のある文献リストを完成させる。また、所属機関に所有していない文献や、手に入らない文献に対しては、現地に赴き文献収集を行う。 (ii) 言語データのさらなる収集に努める。その際、次のコーパスが新しく構築されたので利用する。(GloWbE: Corpus of Global Web-Based English、Corpus of American Soap Operas) (iii) 平成24年度に分類・分析した研究者ごとの認識様態性・主体性・文法化の定義を、収集したデータと照らし合わせて、どの定義が妥当であるか、あるいは理論を修正する必要があるか、検討する。 (iv) (iii)で行った理論の考察・修正を元に、データの妥当的な理論的説明を目指す。さらには、文の作成を行い、英語母語話者に文の容認性判断を仰ぐ。 (v) 分類した言語データの中で、先行研究の分析では説明できない言語現象や見逃されている言語現象がないか検討する。 (vi) 英語のused to beと日本語の「おそらく」の文法化現象について、認識様態性と主体性の観点から、両者を同じように説明できるか、あるいは相違点があるか、考察する。 (vii)これまでに行った研究成果をまとめ、研究会・学会等で発表する。そして、発表時に指摘された問題点・分析において不備である点を修正する。また、もらったコメントによりさらなる研究の改善を行う。 (viii)積極的に国内外の雑誌に論文を投稿し、広く他の言語学者の意見や、問題点の指摘をいただく。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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