研究概要 |
本研究では,日本語教育において、概念規定さえ明確でない実践研究の問題を,文献調査と日本語教師および学習者へのインタビューの分析を通して考察した。教師や学習者は,教室において,どのような実践活動を形成しているのか,そして,教育制度や政策は,教師の実践,思考,意識にどう影響を及ぼし,学習者の学びにいかに反映されているのか,これらの実態を検証し,構造を明らかにすることを目指した。その上で,日本語教育学としての実践研究の位置づけを明確化し,実践の構築に寄与する「対話的アセスメント」という新たな理論とアプローチを提案した。 「実践研究」の文献調査においては,1968年から2010年までの42年間に学会誌『日本語教育』に掲載された「実践研究」論文,1604本を調査し,各々の実践の中で,教育観,言語能力観,評価がいかに意味付けられてきたのかの内容分析を行い,評価研究の変遷と合わせて検討した。また,日本語教師にインタビューを行うことによって,日本語教師の実践研究観を明らかにした。先行研究やインタビュー調査から問題を提起するプロセス,問題を踏まえ,実践を設計し,改善していくプロセス,実践から仮説を立ち上げ,理論を構築していくプロセスを往還的に進め,これらのプロセスの実態を「対話的アセスメント」という「実践研究」として詳細に記述した。 この研究によって,日本語教育において,言語能力観や教育観が生成され,変容してきた背景と経緯はいかなるものか,言語能力観や教育観,教育制度によって,評価や実践のあり方はどのように変化してきたのか,そこにはどんな問題があるのかを考察した。
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