複数の言語環境に住むバイリンガル児童の場合、アイデンティティをなす家庭内言語(home language)を習得できる場は限られている。本研究では、バイリンガル児童の日常生活の中で家庭内言語の習得へと繋がる場面を明らかにするため、研究協力者である韓国人バイリンガル児童3人の言語データを縦断的に収集し、家庭内言語のインプットとアウトプットの様子を観察した。 観察の結果、3人の児童と母親らとの会話の中で、母親が使用した韓国語の語彙が児童の次回の会話の中で使われており、それに伴い日本語から韓国語へとコードスイッチングが活発に行われている場面が複数確認できた。母親の発話からインプットされた韓国語は、児童が行うコードスイッチングのキューの役割をもしており、母親が発する韓国語によって、児童らは日本語から韓国語へとコードスイッチングを行っていた。実際に外国人児童が母語を習得できる場面が限られている中で、母親との会話は貴重なインプットのチャンスを与えることが実際の会話データから確認することができた。 研究の結果は、2015年8月中国の延辺大学で行われた<第4回中日韓朝言語文化比較研究国際シンポジウム>にて「家庭内言語のインプットについて考える-韓国人同時バイリンガル児童の親子間の会話を中心に」というテーマで発表を行った。 また、11月には、立教大学で行われた<第12回第1言語としてのバイリンガリズム研究会> にて、「バイリンガル児童の言語選択の意思を尊重した家庭内言語の習得」について研究発表を行った。
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