研究課題/領域番号 |
24720245
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 山口福祉文化大学 |
研究代表者 |
田中 里奈 山口福祉文化大学, 社会福祉学部, 講師 (40532031)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 韓国 / 「在日コリアン」 / 日本語教師 / ライフストーリー |
研究概要 |
本研究は、日本で生まれ育ち、成人してから韓国に「帰国」した「在日コリアン」の日本語教師(以下、「在日コリアン」教師)たちの日本語教育を中心としたライフストーリーから、教師たちの経験と意味世界を捉えるとともに、旧宗主国のことばを「母語」とする人々が旧植民地においてそのことばを教えることの意味を明らかにし、韓国の日本語教育の歴史を新たな視点から描くことを目的とした研究である。 本研究では、理論的サンプリングを用い、研究期間内に「在日コリアン」2世・3世の教師25名程度にライフストーリーインタビュー調査(1人につき2時間程度のインタビューを2~3回)を行う予定である。既に1~2回インタビューを実施した協力者もいるが、当該年度は日韓を往復し、のべ20名程度の「在日コリアン」教師からライフストーリーの聞き取りを行う予定であった。 しかし、渡韓が困難であり、インタビュー実施が難しかったため、これまでにインタビューを実施した教師たちのインタビューデータの再分析を行うとともに、国境を越えた人々の移動やポストコロニアル研究などに関する文献をもとに、語りの文脈を理解するための研究背景を整理した。これにより、「在日コリアン」教師の研究における位置づけを明確化させることができたのではないかと思われる。この他、言語学研究や言語教育研究における「ネイティブ/ノンネイティブ」の議論を整理し、論文を投稿した。基本的には、調査協力者の語り全体から意味世界を構築することを念頭に置き、ライフストーリーの分析を遂行するが、当該年度に行った、関連する先行研究を概観するという作業は、今後、多くの教師たちの語りをさまざまな視点から包括的に解釈していく際に有用だと思われる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
渡韓が困難な時期があり、「在日コリアン」教師へのインタビュー調査を新たに行うことはできなかった。しかしながら、この間、これまでに聞き取りを行い、既に文字化まで済ませてあったインタビューデータの再解釈を行うことができたため、研究の方向性が明確となった点は評価されるのではないかと思われる。 また、関連するさまざまな文献を読むことで、「在日コリアン」教師を捉える視点をこれまで以上に多角化させることができたと思われる。次年度以降、インタビュー調査がスムーズに進行する可能性が期待できる。
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今後の研究の推進方策 |
韓国におけるインタビュー調査を2013年8~9月、および、2014年2~3月に実施し、より多角的に「在日コリアン」教師の語りを分析していく予定である。また、その際には、韓国国内でしか収集できない,韓国における日本語の位置づけや,日本語教育・日本語教師,「在日コリアン」の位置づけに関する資料・文献も入手する予定である。 インタビュー終了後はすぐに文字化の作業を行い,ライフストーリーの解釈を行っていく作業に入っていく。一人一人のインタビューデータを丁寧に分析するよう心がけるとともに,それ以前のインタビューデータと照らし合わせながら,そこからどのような世界観・意味づけが立ち表れるのかを丁寧に描いていく。 次年度の下半期では,分析結果の発表と論文の執筆を行っていく。
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次年度の研究費の使用計画 |
当該年度は文献講読が主となり、「物品費」が高くなった。次年度はインタビュー調査がメインとなり,また,それと並行して,学会や研究会での発表を積極的に行っていく予定であるため,「旅費」や「謝礼」に研究費をあてることになると思われる。 また,研究成果の発表後は,論文投稿を行っていくため,論文掲載費などにも研究費を使用することになると思われる。
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