本研究は、在韓「在日コリアン」の日本語教師25名へのライフストーリーの聞き取り調査から、教師たちの経験と意味世界を捉えるとともに、旧宗主国のことばを「母語」とする人々が旧植民地においてそのことばを教えることの意味を明らかにしたものである。教師たちの中は、日本語のネイティブスピーカーだが、国籍・血統的には日本に属さず、<言語=国籍=血統>の一体化を兼ね備えていない属性のために、日本語教育におけるポジショナリティーに困難や葛藤を抱えている者もいた。ある国籍や血統をもつ者にその言語の正統性を付与してしまう「単一性志向」が言語教育においても見られることが明らかとなった。
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