研究課題/領域番号 |
24720248
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 山形大学 |
研究代表者 |
石橋 嘉一 山形大学, エンロールメント・マネジメント部, 准教授 (40604525)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
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キーワード | ヨーロッパ |
研究概要 |
本研究の目的は、言語ポートフォリオを活用した自律英語学習行動の評価モデルを創出することである。 平成24年度の研究では、まず、日本人大学生における授業外での自律英語学習の実態を調査した。(1)首都圏の私立大学383名の調査協力者のデータを分析し、英語学習について学習目標の評価を行った。(2)(1)の分析過程と並行して、同調査協力者のデータから、授業外英語学習内容の評価を行った。主な結果は、(1)では、キャリア志向、学術志向、異文化理解志向、対人コミュニケーション志向など、英語学習目標の概念生成を試行した。(2)では、授業外英語学習内容と言語熟達度(TOEICスコアの高低)との関係を分析した。言語熟達度の高い学習者層では、実際に他者と英語のやり取りをともなうインタラクション中心の英語学習が展開されていることが分かり、一方、言語熟達度の低い学習者層では、高校時代の英語学習の復習とテクスト中心の学習が展開されていることが分かった。 平成24年度に実施した本研究の重要性は、特に、(2)の言語熟達度(TOEICスコア)の高低により、授業外での英語学習内容に相違があることを示唆できたことである。本知見をもとに、言語ポートフォリオを活用し、学習者の言語熟達度と自律英語学習内容の関係を継時的に記録し、評価するモデルを試案した。今後は本モデルのさらなる検討と、新たな評価モデルの創出を探求し、研究実施計画に基づき学習支援方法の探求へと結びつけていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
以下に、まず本研究の目的を記し、その目的に対応するかたちで達成度と理由を記述する。(1) 目標設定段階において、学習目標の評価を行う。(2) 学習遂行段階において、学習ストラテジーのレパートリーの種類・数量、及び学習内容と学習時間の伸長を評価する。(3) 評価段階において、自己の学習に対する評価・内省能力について評価する。(4) (1)~(3)の各学習段階で実施された評価をもとに、言語ポートフォリオを活用した自律英語学習の評価モデルの構築を行う。 (1)では、首都圏の私立大学383名の調査協力者の自由記述のデータから、学習目標について概念生成を行い、評価を試行した。次に、既存の尺度を使用し、北東北地区の国立大学29名、首都圏の国立大学57名を対象に追調査を行った。学習目標の分類は達成できたが、学習目標の具体性・具現性の評価では課題が残ったので、平成25年度実施予定の調査で本課題の解決をはかる。(2) では、(1)と同様の調査協力者と研究方法でデータを収集し、評価を行った。学習内容の分類と言語熟達度との関係は評価することができた。一方、(2)の学習ストラテジーと(3)評価段階(内省)についての評価は、現在引き続き分析中である。(4)の評価モデルの創設は、当初から平成25年度の実施計画である。現段階での課題は、(1) 目標設定-学習遂行-評価の一連のプロセスにおける時系列でのデータの連続性(収集と評価)を維持することである。研究協力校の諸事情により、データ収集の環境と条件が異なるので、本課題の解決を未然にはかり、目標の達成に努めたい。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究の推進方策は、(1) 幅広い専攻で調査を実施し, データ収集と分析の精緻化を図ることで, 平成24年度の研究で得られた知見を一般化できる範囲を広げる。(2) 言語熟達度に加えて, その他の要因として内的動機づけ (intrinsic motivation) (Pitrich et al. 1990) や, インタラクティブな学習に必要と考えられるコミュニケーションの志向性(willingness to communicate)(MacIntyre et al. 1997) を測る測度を質問紙に加え、自律英語学習と様々な要因との関連を詳細に調べる。(3)言語ポートフォリオを活用した評価の予備実験を実施する。予備実験では、TOEIC(IP)全国平均スコアより高い学習者と、低い学習者を2分して、それぞれに活用群と非活用群を設定する。また、活用群では、被験者間で学習記録を共有群と非共有群を設定し、学習の変容を記録・分析していく。(1)~(3)のデータ収集と評価終了後、自律英語学習の各学習段階において、どのような行動の変容が見られたのかを検討し、予備的評価モデルを構築する。その後、再度、言語ポートフォリオの運用体制、評価について改善すべき点の有無を検討する。修正、改善すべき点を整理し、それを取り入れた実験デザインを再度打ち出す。また、そのモデルの効用と限界を見極め、異なる状況下にも適用できるような汎用性のある評価モデルを検討する。以上の研究推進方策から、研究成果をまとめ、国内外の学会で発表し、報告書をまとめる。また、研究成果を広く社会に公開できるように、ウェブサイトにも掲載する。
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次年度の研究費の使用計画 |
平成25年度では、分析用ソフトウェア(定性的、定量的)の購入費を経費として計上した。設備備品については、実験データの収集と解析に必要な機器(録音・録画機器等)、及び必要な消耗品に経費を計上した。また、データ収集と評価の方法については、本研究成果の善し悪しに多大に影響してくるため、国内在住の研究協力者とは直に打合せを行い(年4回、千葉県の放送大学にて:申請者と協力者が集合するにあたり立地的に中央に位置するため)、それぞれの専門的見地からの意見交換ができるように国内旅費を計上した。 研究成果の発信については、国内学会での研究発表を重点的に行う。平成25年度7月にはEIFEL主催によるポートフォリオ研究の国際研究会議が開催されるため、イギリス・ロンドンへの旅費を計上した。
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