本研究では、言語ポートフォリオを活用した日本人大学生の自律英語学習の評価モデルを作成することを目的とした。まず、自律英語学習の内容は、学習者の言語熟達度(英語力)と関係があると考え、授業外に行われる自律英語の学習内容を質問紙調査で明らかにした。 さらに、学習内容をカテゴリに分類し、被験者のTOEIC®IPスコアと紐つけして、自律英語学習の内容と言語熟達度の高低との関係を明らかにした。その結果、読む、聞く、話す、書く、やり取りをする、という主要な5領域の英語学習内容のカテゴリと、言語熟達度(TOEIC®IPスコア)の高低に特徴的な相違がみられた。特に、やりとりをする、という実際に口頭で他者とコミュニケーションをともなう自律英語学習は、言語熟達度の高群に分布し、一方、単語帳や教科書を使用するテキスト中心の学習は、言語熟達度の低群に分布することが明らかにみられた(本研究目的前半の実績は、日本教育工学会論文誌38(1)に採録、論文化)。 次に、本研究の後半では、先の研究結果において、やりとりをするという言語活動の自律英語学習領域に研究を焦点化した。具体的には、オンライン英会話に学習記録のログを蓄積できるシステムを業者の協力を得て構築し(Web上にポートフォリオ機能を実装)、主に言語熟達度の高低と、社会的ストラテジーの高低を分析の機軸に、学習者の主観的な振り返りの記録とともに、構築した先のシステムから客観的な自律英語学習のデータを分析した。また、数値では現れない自律英語学習の実態をも学習者の視点から明らかにするために、被験者にインタビュー調査を行い、自律英語学習を促進する要因と、阻害となりうる要因を修正版グランデッド・アプローチ(M-GTA)を応用し、一連の自律英語学習の評価モデルを作成した。
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