研究課題/領域番号 |
24720258
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
鬼田 崇作 広島大学, 外国語教育研究センター, 特任講師 (00611807)
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キーワード | 語彙習得 / 単語認知 |
研究概要 |
前年度の成果をもとに,平成25年度においては,本実験を行った。第一に,日本人英語学習者の語彙表象(lexical representation)の様相を調査した。実験参加者は日本語を母語とする大学生,大学院生の英語学習者である。実験では,4文字,5文字の基礎的で高頻度な英単語を用いた(playなど)。その結果,英語の習熟度が低い学習者では,語彙表象の発達段階が英語母語話者の小学3年生と同程度であり,習熟度の高い学習者においても,その語彙表象の発達の程度は英語母語話者の小学3年生と5年生の語彙表象の中間程度であることが示された。日本人英語学習者の英語語彙表象の様相についてはこれまでの研究で調査されていない点であり,貴重な実験結果が得られた。この結果から,日本の英語教育環境においては,英語母語話者と同レベルの語彙表象の発達は望めないことが示唆された。 第二に,上で示された語彙表象の様相が,教育的な介入により変化するのかについて実験を行った。上記の研究で用いた材料が高頻度な基本語であることから,本実験では多読を教育的介入の手段とした。多読は13週間行われ,毎週30程度とした。その結果,実験に用いた単語についての自動化(automatization)は確認されたが,語彙表象の発達段階に変化は見られなかった。この結果は,上記の実験の内容とも整合性を持ち,語彙表象発達の困難性を示している。 3年計画の3年目となる平成26年度は,これまでの研究結果を公表する。また,上記2つの実験では,同じ実験材料を用いているため,その他の材料を用いた実験について検討の余地がある。そこで,別の実験材料を新たに選定し,追加実験を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究の計画調書においては,平成25年度の研究計画として,(1) 本実験の実施,(2) データの解析,の2点を挙げていた。以上の2点は計画通り実行できた。以上のことから,当初の計画通り,本研究は概ね順調に進呈していると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度においては,25年度に実施した本実験の結果を学会発表や論文の形で公表する。また,25年度に行った実験結果をもとに,追加の実験を行予定である。具体的には,25年度の実験では,4文字と5文字の英単語を用いた実験であったため,追加の実験では,さらに基本的な単語である2文字や3文字の英単語を用いた実験を行う(ofやtheなど)。これにより,日本人英語学習者の語彙形式の部分的表象について,さらに包括的な検討を行う予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
購入予定であった書籍(Computational Modeling of Visual Word Recognition)が入手困難な書籍であったため,購入に至らなかったこと,また,次年度に追加実験を行うことになり,その成果公表のための予算が別途必要となり,今年度の予算執行を一部見送ったため。 次年度に執筆予定の論文の校正費として使用する。
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