研究課題/領域番号 |
24720259
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
阪上 辰也 広島大学, 外国語教育研究センター, 特任講師 (60512621)
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キーワード | コロケーション / 第二言語習得 / 言語処理 / 書き言葉 / コーパス |
研究概要 |
平成25年度においては,大学の学部1年生に対し,50分間でエッセイを書かせる課題を実施した。データの収集時期を2回に設定し,10月上旬と,1月下旬に収集を行った。こうして得られたデータをもとに,中級レベルの日本人英語学習者によって書かれた英作文コーパスを構築した上で,4ヶ月間に渡るライティングの授業を受けた結果,どのような変化が生じたか,また,上級レベルの学習者データとの比較を通し,どのような違いが見られるかの調査を行った。その結果として,中級レベルの学習者が初期に書く作文では"I think"のような定型表現が多用されるものの,時間を経るごとに,"It seems that"のような代用表現が使われるようになっていることがわかった。加えて,上級レベルの学習者データとの比較した結果,2語や3語の連鎖からなる表現については,使用された表現に共通点が多く見られることがわかった。ただし,上級レベルの学習者においても,"I think"の使用頻度は高くなっており,その結果を踏まえると,学習者は,授業の中で受ける教科書の例文,教員からの助言,Webにある情報の検索結果といったインプットを受けることで,一時的に,使用する表現に変化が生じるものの,最終的には,自分にとっても最も優先度の高い表現として"I think"が使われることが推測され,こうした傾向の経年変化は,いわゆる「頻度効果」による使用するコロケーションの優先度設定が行われていることによるものと考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成25年度においても,昨年度からの継続的なデータ収集を行っったことで,分析に必要となるデータが十分に確保できていること,また,その分析結果を紀要等で公表できていることから,おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
今後は,これまでに蓄積したコーパスの詳細な分析を進める予定である。主に2つの課題を設定し,1) 個人ごとの表現の変化の分析を行い,使用される品詞の種類や頻度,文の構造や文章の展開方法などがどのように変化するのかを明らかにすること,また,2) インプットの影響による作文の変化がどのようになっているかを明らかにすることである。最終的には,これらの結果を学会発表・論文で公表する計画である。
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次年度の研究費の使用計画 |
ワークステーションの購入を行う予定であったが,性能や価格面から十分な要件を満たす機材が見つからず,次年度使用額が生じた。 データ処理用のワークステーション購入及びデータ整理や収集のための謝金として使用する計画である。
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