研究課題/領域番号 |
24720263
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研究機関 | 県立広島大学 |
研究代表者 |
高島 裕臣 県立広島大学, 保健福祉学部, 准教授 (60353314)
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キーワード | 第二言語習得理論 / 第二言語情報処理 / メンタルレキシコン / 心理言語学 |
研究概要 |
本研究は同一の英単語の翻訳反応潜時・正反応率を聴覚呈示条件下と視覚呈示条件下とで比較することで「リスニングとリーディングのパラレリズム(parallelism:平行、並行、類似、対応、比較)」について探究するもので、パラレリズムのうち(1)同一語の聴覚呈示 条件下と視覚呈示条件下での情報処理の相関、(2)語彙情報処理効率の個人差と読解力・聴解力の個人差の連続性、の2点の検証を目的とする。日本人学習者が評定した親密度や母語話者習得時期をはじめとする語彙特性が最大限に利用可能であるとして既に選定していた165の英語語彙のうち、同音語のあるもの、名詞用法と動詞用法とで発音や強勢位置が異なるものを除いた146語を用いて平成24年度から英語語彙翻訳実験を開始した。平成24年度中に実験実施までこぎつけた被験者はわずか8名であったが、その時点で集まっていたデータを整理・分析し、翻訳反応潜時・正反応率を視覚呈示と聴覚呈示とで比較したところ有意な相関を確認することができたので、中間報告として平成25年度に所属学会で口頭発表をすることができた。平成25年度前期にも実験を継続し、目標だった20名を超える分量のデータを収集した。平成25年度末には正反応率と反応潜時データの解析を終え、パイロット分析での結果にそう分析結果を得た。誤反応の分析もほぼ終了の段階までこぎつけた。研究計画全体の流れは、(1)実験の準備と実施、(2)正誤判定などデータの整理、(3)分析、(4)所属学会で中間結果を発表、(5)論文の執筆・投稿、の5段階であるが、あとは「(5)論文の執筆・投稿」を残すのみである。平成25年度に行った学会発表は中間段階のデータだったので、平成26年度は全体のデータでの分析結果と誤反応分析の結果とを所属学会で発表し、並行して研究成果を論文にまとめることとする。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成24年度研究計画において、平成24年度中に実験を終了する予定であったところ、募集に応じて参加した被験者数が少なく、平成25年度にも実験を継続しなければならなくなったのは、想定の範囲内ではあったが、進展の遅れと捉えることもできるかも知れない。しかし、データ数が少ないながらも分析結果を所属学会で発表することができた。また、平成25年度に継続して行った実験でデータ数を当初の予定通りに増やすことができ、平成25年度末には、全てが完了したわけではないが分析のうち重要な部分を終えることもできた。研究論文という形にはまだなっていないものの、内容の点では、研究の目標は達成されている。平成24年度の遅れを取り戻し、平成26年度に成果発表に向けてまい進することができるようになったということであり、総合すると、おおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
まず、まだすべてが完了したわけではないのでデータ解析を継続する。英語語彙翻訳反応潜時と正反応率の分析はほぼ完了しているので、誤反応の分析をできるだけ完了させることが今後の目標である。平成26年度は、所属学会での、誤反応分析の結果報告がメインとなるが、平成25年度に行った学会発表ではデータセット全体の分析結果を提示していないので、あわせて提示したい。そして全体の成果を論文の形にまとめていく。以上が今後の本研究の推進方策である。
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次年度の研究費の使用計画 |
旅費に関しては当初の見積もりを超えたが、それでも次年度使用額が生じた。大きな理由は、必要なだけのデータが集まったものの、被験者数が少なかったということであろう。平成24年度の次年度使用額も活用して、もっと多くの参加があってもまかなえるように謝金を見積もっていたので、差が生じたということである。ただ、データは必要なだけ集まった。また、データ解析に追われ、「その他」として計上した直接経費があまり消費できていないのも理由のひとつとして挙げられる。この点を平成26年度に改善し助成金を有効に活用して研究を推進する。 次年度使用額は、平成26年度請求の助成金と合わせて、所属学会での発表、データ解析や論文執筆に有用なソフトウェアの更新・新規導入、文献収集において有効に活用する。
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