本研究課題は,認知言語学の知見に基づき『学校認知英文法』の開発に向けた基礎研究を行うことを目的としている。特に本課題では,前置詞,名詞の可算・不可算の問題,冠詞に焦点を絞り,中心となる(イメージ)スキーマをベースに,ネットワークの拡張を行うというアプローチで教材開発および教授法の開発を行った。最終的に,中学・高等学校の現場で教える英語教員が言語学の専門的な知識を持たずに利用が可能な,英文法の教授法および教材の体系的な開発を目指して,ワークシート型の教材を開発した。 平成26年度は,本研究課題の最終年度にあたるため,これまでの研究全体のまとめを行った。平成25年度までに開発した教材の教育効果の測定,およびそれに基づく,教材の改良は完了しているため,平成26年度は,中学・高等学校で英語を教えている教員に対して,教材の活用可能性について意見聴取を行った。教材に対する現場の教員の評価は概ね良好であった。。特に専門的な用語を用いずに,学習者の注意をコントロールすることで,中心的な(イメージ)スキーマおよびその拡張パターンに気づかせるという方法がうまく作用することがわかった。さらに,本研究課題で扱った3つの文法項目以外の文法項目も含めた,体系的な教材の開発に対する要望が強くあがった。 本研究課題で応用を試みている認知言語学の言語観では,形態素,語,構文という言語の様々な単位を,それぞれ独立したものとは捉えず,複雑さの度合いが違うのみで同じ仕組みで説明できるしている。そのため,平成26年度は,今後の研究への応用を考え,本研究課題で扱った比較的単純な文法事項での手法を,より複雑な文法事項へ応用することができないか検証を行った。その結果,本課題で用いた(イメージ)スキーマをベースに学習者の「気づき」を通した教授法・教材の開発の可能性が示唆された。今後の研究課題とする予定である。
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