まず、本研究の目的は、質的・量的の2つのアプローチを用いて大学での英語教育の中でどのような要因が英語学習に対しての学習動機を高める要因となっているかを調査することであった。その為に(1) 大学における英語学習者の学習動機構造をL2セルフシステム理論に照らし合わせて、分析し、(2) 大学での英語学習意欲を高める要因にどのようなものがあるかを明らかにし、(3)教員養成プログラムや大学のファカリティ・ディベロプメントでの使用を視野に入れた本研究の知見をまとめた研究書・マニュアルの作成を行うことであった。 また、平成27年度(最終年度)の研究の目的は、3年間の基礎研究により明らかになった結果を基に、現場の教員の方々へのフィードバックとして教員養成プログラムや大学でのファカリティ・ディベロプメントでの使用を視野に入れた大学レベルでの英語学習意欲の動機を高める要因に配慮した具体的な方法論、方略(ストラテジー)、及び授業活動に関する研究書・マニュアルの作成を行うことであった。 平成26年度に英語・日本語二つの言語で本研究の知見をまとめた研究書をそれぞれ1冊ずつ出版できたため、平成27年度は、800名ほどの大学1年生に対象に本研究結果に基づき作成した質問紙を用いた本調査を行った。分析を近日中に終え、論文投稿をする予定である。 本研究によって明らかになったのは、L2セルフシステムの理想自己、義務自己、英語学習経験の三要素の中でも特に理想自己を持つことの重要性である。また、なんとなくこうなりたいといったあいまいな理想自己を持っていてもなかなか学習行動と結びつかないことが質的調査の結果から理解できた。本研究結果により、様々な学習者が明確な理想自己を持てるように教室内・外でサポートすることの重要性が示唆された。
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