研究課題/領域番号 |
24720277
|
研究種目 |
若手研究(B)
|
研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
尹 盛熙 関西学院大学, 国際学部, 准教授 (70454717)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 動詞性名詞 |
研究概要 |
本研究の目的は、上級の韓国語教育における課題として、韓国語の動詞性名詞(日本語のサ変動詞の語幹と類似した名詞群)及び関連形式を題材に、上級学習者向けの指導法を考えることである。 24年度の作業はまず、最初に予定していた通り、関連形式のリストアップと概略的記述、新語動名詞のデータ収集から始めた。また、すでに確保している韓国語動名詞のリストから、漢字構成・意味・用法などにおいて日本語との違いが際立つ項目を、別途のリストとして作成している。これは、今後の研究の基礎になる作業であると同時に、指導項目のデータの体系的な整理という意味で、学習者と指導者、両方にとって必要な作業である。 また、本研究者の所属大学で実施する上級クラス(3年・4年)の授業で、学生の誤用例を収集している。これは、実際に学生が学習に苦労している部分を把握し、研究の方向性とのずれの可能性を最小限にするためである。 一方、先行研究の文献を追加収集し、関連する内容を整理した。特に、これまでに重点的に文献収集を行ってきた韓国語学、対照言語学分野に留まらず、韓国語教育や社会言語学、認知言語学、異文化コミュニケーションなどの隣接分野において本テーマに関連するような文献も収集・整理している。これは、実際の指導場面では表に出ないような、現象の言語理論的な原理を、より学習者に親しみやすい形で説明できるようにするために新たな視点が必要と判断したからである。 また、25年度以降の作業の下準備として、実際の用例収集も始めた。25年度の作業として予定している、動名詞を中心とする名詞句(例:規律違反についての調査の実施)の特徴がよく表れている用例として、「新聞の見出し」のデータを、これから重点的に収集する候補として考えている。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
24年度に予定していた作業のうち、「動名詞及び関連形式のリストアップと記述」、「先行研究の整理」は概ね計画通りに進んでいるが、「新語動名詞のリスト及び用例集の作成」、「形式動詞の選択と漢語構成素の関連性の検証」の二つの作業が遅れている。 遅延の理由はまず、学習者に提示する項目としての新語動名詞の重要性を見直す必要があるためである。特に韓国語の新語動名詞の例を集めたところ、ネット関連の俗語及び略語が多くを占めている。このような動名詞は、「ツイッター」や「カカオトーク」など、オンライン上の会話における実際の活用度が高いものとはいえ、積極的に使用する語彙というよりは理解できる語彙として指導する方が望ましいのでは、という懸念から、当初の予定より比重を減らすことについて検討している。 次に、動名詞に対する形式動詞の選択の問題において、現象に働く原理と、学習者への指導の方向性の間に調整の必要性が出てきたことも、作業遅延の原因である。現象に関わるいくつかの原理を特定しているものの、それを適用した説明が、結果的に学習者に対して文法的に微妙な違いまでを区別するように求める形になる恐れがあり、学習者側にとってより分かりやすい説明ができる方向性を模索する必要があると判断した。そのため、別の方向性を模索すべく、隣接分野からの情報を収集することに時間がかかっており、やや作業が遅れている。 そして、データ収集の範囲が多少広がったことも理由の一つである。当初の予定としては、両言語で共通する漢語動名詞を中心として分析を進める予定であったが、韓国語の漢語動名詞の中には、日本では使われない韓国語固有の漢語(Sino-Korean)の動名詞も多数あり、日本語と共通する動名詞にのみこだわるのは得策ではないと考えられるため、データの範囲を多少広げる必要が出てきたためである。
|
今後の研究の推進方策 |
まず、24年度の成果に基づいて、上半期には基本的な記述を済ませた各現象について、より詳細な記述と適切な例文の収集(作成)などを重点的に行う。下半期には、25年度の課題として設定した、「目的語を含む動名詞句の分析」と「教授法の試案の作成」の作業に入る。また常時行う作業として、韓国語の動名詞リストの補足・修正・細分類などの作業を行い、比較対象として、使用頻度に基づく日本語の動名詞リストの作成を進める。合わせて、漢語動名詞にこだわらず、使用頻度の高さを優先し、使用頻度の高い固有語の動名詞もリストに含めることを検討している。 また、新語動名詞のデータ収集も、24年度に引き続き行う。新語動名詞は、俗語などが多く含まれていることから、全体のデータ収集における比重を減らすことを検討しているものの、動名詞及び関連形式の仕組みの原理を説明するための分析が韓国語の動名詞全般において有効であるということを示す上では、新しく作られる語彙にもその原理が適用できるかどうかは重要な問題である。そのため、作業の途中経過をチェックする指標となる貴重なデータとして、引き続き収集を行う予定である。
|
次年度の研究費の使用計画 |
データの収集、入力作業、整理作業などを重点的に行うため、アルバイトなどの人件費及び関連用品の購入に優先的に使用する予定である。また、研究計画の遅れによりデータ入力の作業がまだ本体制になっていないことから、24年度に予定していたノートパソコンの購入が行われておらず、関連経費がまだ消費されていない。25年度は、データ収集と入力のためのノートパソコンを購入するが、韓国語のデータ管理の有効性を高めるため、購入するパソコンは韓国語OSのものとし、合わせて韓国語編集ソフトも購入する予定である。
|