研究課題/領域番号 |
24720277
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研究機関 | 関西学院大学 |
研究代表者 |
尹 盛熙 関西学院大学, 国際学部, 准教授 (70454717)
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キーワード | 動詞性名詞 / 韓国語教育 |
研究概要 |
本研究の目的は、上級の韓国語教育における課題として、韓国語の動詞性名詞(日本語のサ変動詞の語幹と類似した名詞群)及び関連形式を題材に、上級学習者向けの指導方策を考えることである。 25年度には、基本的な記述を済ませた動名詞関連の各現象について、より詳細な記述と適切な例文の収集及び作成などを行った。また、当初の計画で25年度の課題として設定した「目的語を含む動名詞句の分析」、即ち韓国語の「名詞句+uy(の)+動名詞」という形式の分析を進めた(日本語でなぞらえると、「調査の実施(=調査を実施する)」など)。併せて、分析のための用例収集として、このタイプの動名詞句が多く用いられる新聞記事や見出しなどを観察し、データとして整理した。 それに加え、当初の予定にはなかった作業として、上記の形式から助詞「uy」が省略され、複合語に近い形(日本語の「調査:実施」のような形)の例も併せて観察した。その結果、例の多さから、もともと日本語に比べて省略されやすかった韓国語の助詞「uy」が、過去に比べてさらに省略されやすくなっている可能性を考え、韓国語の新聞見出しの例もデータ収集の範囲に加えた。さらに対照するデータとして、日本語の新聞見出しの例も併せて収集を行い、複合語に近い動名詞句における日韓の違い(形式に用いられる動名詞の意味的制限、複合語化する成分など)について分析した。当初の計画では助詞「uy(の)」が介在する動名詞句を分析の中心に据える予定だったが、助詞が介在しない、複合語に近い動名詞句にまで範囲を広げて分析を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
25年度に予定していた作業は、(1)「動名詞リストの作成及び用例収集」(2)「リストアップした動名詞関連形式における理論的分析」と、それに基づいた(3)「教授法の試案の作成」である。このうち、(1)が予定より遅れていること、(2)に新たに分析すべき現象が加わったことが遅れの主な原因であり、そのため(3)も影響を受けている。 (1)では、動詞性名詞の目録作成のための入力作業をアルバイト2名による手作業で行っていたが、データ収集の範囲を広げたことから作業量が当初の予定より増えた。それに対処すべく、作業の効率化に向けてコーパス処理の方法などを試み、方向性を模索している。 (2)では、当初の計画通り「名詞句+uy(の)+動名詞」という動名詞句を中心に、最新の新聞記事などから用例を収集・観察した。それに加え、「調査:実施」のように助詞が省略され、複合語の形をしたものにも注目し、観察を進めた。このような例は韓国語のみならず日本語でも多数存在するが、特に日本語の「の」に当たる韓国語の助詞「uy」は、日本語に比べて省略される度合いが高く、長い動名詞句(成分数が多い)でも、助詞が省略され、複合語の形になる例が日本語に比べて多い傾向が認められた。そのため、複合語の形の動名詞句にまで分析を拡大することが必要であると判断したことから、作業量がかなり増えた。 これは当初の予定には含まれていなかったが、日韓のデータにおいてその構成に異なる点が見られる上に、頻繁に用いられることにより学習者のニーズがさらに高くなると予想されることから、動名詞の分析に加えるべきであると判断した。この二つの形式が意味的にはどう異なるのか、それぞれの言語でどちらが頻出するのか、などについての理論的分析も加えた方が、韓国語の動名詞に関わる現象を記述する上でより説明力のある分析を提示することができると考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
今後は、これまでの作業に基づいて、平成26年度上半期には新聞見出しのデータ収集と分析を続け、その結果をまとめる予定である。助詞が省略され、複合語の形になる動名詞句(「調査:実施」など)は、新聞見出しのように空間的制約のある形式において頻繁に見られるため、韓国語の新聞見出しの例を収集する一方、対照データとして日本語の新聞見出しも収集し、対照分析を行う。また下半期には、上半期の結果を平成25年度までの作業結果と組合せ、韓国語の動名詞句の主な現象を整理し、日本語母語話者にとって理解しやすい形で記述・説明する案を作成する。 また常時行う作業として、新しく作られる「新語動名詞」のデータ収集も行う予定である。これは、動名詞及び関連形式の仕組みの原理を説明するための分析が、韓国語の動名詞全般において有効であるかどうかを確認し、作業の途中経過をチェックする指標として新語動名詞を位置付けているためである。 上記の作業を進める上で、遅れているデータ収集と入力作業の効率化に優先的に取り組む。具体的には、基本的な作業方式を手作業からパソコン処理に変更するため、収集データをコンピュータで処理できるようにする環境を整える(テキストファイル変換ソフトの購入、コーパスなどの電子資料の使用など)。そのための専門知識や資料の収集にも、予算を優先的に配分する。また、手作業で収集しなければならないデータのため、手作業も引き続き行い、作業人員と作業時間を増やして対処する。
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次年度の研究費の使用計画 |
動詞性名詞の目録作成のための入力作業をアルバイト2名による手作業で行っていたが、当初の計画にはなかった現象も分析の対象として取り上げる必要が発生し、データ収集の範囲を広げたことから作業量が当初の予定より増えたため、各課題の結果を取りまとめることができず、未使用額が生じた。 遅れているデータ収集と入力作業の効率化に優先的に使用する。具体的には、基本的な作業方式を手作業からパソコン処理に変更するため、収集データをコンピュータで処理できるようにする環境を整える(テキストファイル変換ソフトの購入、コーパスなどの電子資料の使用など)。そのための専門知識や資料の収集にも使用する。また、手作業で収集しなければならないデータのため、手作業も引き続き行い、作業人員と作業時間を増やして対処する。
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