本研究では、上級の韓国語教育における課題として、韓国語の動詞性名詞(日本語のサ変動詞の語幹と同じく、形式動詞と結合して動詞となる名詞群)の指導方針を考えるため、日本語との違いを記述及び分析している。 平成26年度は、前年度に引き続き学習者にとって重要な題材として、韓国語と日本語の新聞見出しと関連記事を取り上げ、データ収集と分析を行った。動詞性名詞は新聞や教養書籍など、学習者のニーズの高い書き言葉テキストで頻繁に用いられる。さらに動詞性名詞は、見出しや各種掲示、案内文などのように、限られた長さでなるべく多くの情報を伝えようとする形式において圧縮度を高めるのに効果的な手段であるという点に注目し、前年度からのデータ観察に加え、動詞性名詞が圧縮度の高い形式に用いられる際の特徴を調べた。 その結果、見出しにおける韓国語の動詞性名詞形式は、助詞などの機能語(文レベルの要素)の使用が日本語に比べて少ないため、「句」より「語」に近い形となる傾向があることが明らかになった。そのような形式はまるで一つの合成語のように振舞い、辞書には登録されず、その場限りの臨時的なものとなることが多いが、活発に生産及び消費されるため、学習者にとって有用なものである。しかし代表的な機能語である助詞が省略される分、動詞性名詞と一緒に用いられる語句(動詞性名詞の意味上の目的語など)との間の意味関係が分かりにくくなるため、学習の負担となりやすい。日本語との相違点を分析することで、日本語を母語とする学習者に対しては、動詞性名詞だけでなく、共起できる語句をコロケーションとして一緒に提示し、動詞性名詞との意味関係を明確に指導する必要があることが明らかになった。
|