研究課題/領域番号 |
24720281
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研究機関 | 岐阜市立女子短期大学 |
研究代表者 |
小島 ますみ 岐阜市立女子短期大学, その他部局等, 講師 (40600549)
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キーワード | 語彙の豊かさ / メタディスコース |
研究概要 |
本研究の目的は、英語学習者のテクストにおける言語的特徴とライティング力の関係に関するモデル化を行うことであるが,25年度は特に語彙の多様性指標と洗練性指標の信頼性や妥当性に関するこれまで行ってきた研究成果を書籍、論文、インターネット上で発表した。まず、小島(2011)で提案したSほか語彙の洗練性指標の方が、語彙の多様性指標よりも、習熟度の異なる英語学習者が書いたエッセイを区別することを示した論文「語彙の豊かさと習熟度の関係」を『英語学習者コーパス活用ハンドブック』(大修館書店)上で発表した。また、Sと既存の語彙の豊かさ指標の信頼性を比較し、Sがより信頼性の高い指標であることを実証した研究の論文発表をSystem: An International Journal of Educational Technology and Applied Linguisticsの第42号上で行った。 さらに、インターネット上で研究者個人のサイトを作成し、研究成果の公開を行うとともに、教育・研究に広く資するため語彙の豊かさ指標Sの分析ツールを、CGIプログラムを使って独自に開発し、公開した(http://kojima-vlab.org)。 ライティング評価に影響を与える言語的特徴として、メタディスコースの使用が考えられる。日本人英語学習者がエッセイでメタディスコースをどのように使用するか、基礎的な研究を行った。メタディスコースとは、テクスト内の意味命題の関係を明らかにし、書き手の立場の表明や書き手と読み手の対話を補助するために使用される言語表現一般を示し、接続詞などが含まれる。本研究では、学習者の作文と英語母語話者の添削文におけるメタディスコースを比較し、日本人英語学習者のメタディスコース使用の特徴を明らかにするとともに、特に不適切に使用されるメタディスコースについて質的分析を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は,主に以下の4点である。 1. 2種類の語彙の豊かさ(語彙の多様性,語彙の洗練性)はライティングの評価をどの程度予測するのか,比較・検討を行う。 2. 語彙の豊かさとライティング評価の関係が,学習者の語彙力発達とともにどのように変化するのか調査する。 3. 小島(2011)で提案した語彙の豊かさ指標Sの分析ツールをインターネット上で公開する。 4. 語彙の豊かさを含めた複数の言語学的特徴とライティング評価の関係を調査し,ライティング力を構成する言語学的要因のモデルを提案する。 25年度は、語彙の多様性指標と洗練性指標の信頼性や妥当性に関するこれまで行ってきた研究成果を書籍、論文、インターネット上で発表した。したがって,研究課題1の基盤となる研究成果の発表ができたと言える。また、語彙の豊かさ指標Sの分析ツールをインターネット上で公開したことから、課題3も達成された。さらに、ライティング評価に影響を与えると言われるメタディスコースについて、日本人英語学習者のエッセイにおける使用傾向を量的、質的に分析したことから、研究課題4の基盤となる研究ができたと言える。以上の理由より,本研究はおおむね順調に進展していると考える。
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今後の研究の推進方策 |
25年度の研究成果を踏まえ,26年度は以下の研究課題を推進する。 1. 25年度の研究成果を論文にまとめ,学会誌等に投稿を行う。 2. 2種類の語彙の豊かさ(語彙の多様性,語彙の洗練性)はライティングの評価をどの程度予測するのか,比較・検討を行うとともに,語彙の豊かさとライティング評価の関係が,学習者の語彙力発達とともにどのように変化するのか調査する。 3. ライティング評価とテクストの言語的特徴の関係を調べた先行研究をできるだけ網羅的に収集し、メタ分析により過去の研究成果の統合を行う。具体的には、ライティングの流暢性、複雑性、正確性はどの程度ライティング評価と関係があるか調査する。 4. 得られた研究成果に基づき,大学英語教育学会(JACET)の英語語彙研究会年次大会やAmerican Association for Applied Linguistics (AAAL)の年次大会等で研究発表を行う。
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次年度の研究費の使用計画 |
交付申請書では、語彙の豊かさ指標Sの分析ツール公開のため,CGIシステムの構築を業者に委託する委託費を計上していたが、業者には委託せず申請者が独自に開発することができたため、予定していた委託費の支出がなかったため。 メタ分析やライティング評価に関する学術図書費に180,000円、資料収集や研究成果発表のための旅費に300,000円、英文校正費に150,000円、発表論文の別刷り印刷費に80,000円、報告書等印刷費に50,000円を使用する予定である。
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