本研究の目的は、技術者養成機関である高専の特色に立脚し、英語による発表に困難を抱える高専生の為に、英語授業の中で完全英語環境を創出し、英語母語話者との実践に即した技術分野での発表に関する擬似的機会を効果的に提供することによって、高専生自らが英語学習の必要性を(再)認識し、自律的な英語発信力の学習活動を促進させる実践的授業運営方法を構築することである。 初年度(平成24年度)における遠隔授業提携先として検討していたニュージーランドのイースタン工科大学(EIT)とマレーシアのマラ工科大学国際教育カレッジ(INTEC)との調整の末、教室内英語環境の創出の確保には目途を付けることができたため、二年目となる平成25年度においては、実戦的な英語発表を行う指導法確立に注力し、正課授業内における展開を実践した。 授業中の様子としては、高専生の基礎英語力不足による教員の補助については想定通りのものであり、事前指導を含めた対応次第でサポートは十分可能であったが、当初想定していたほどの所謂会話のキャッチボールは、多対多の国際遠隔授業では慣れるまでは容易ではないことも改めて理解するに至った。一つの改善の鍵として「指名」という行為を意図的に組み入れることで会話を半ば強制的に進めるスタイルが遠隔授業の特性であり、逆に指名を取り入れない限りは、時折誰も発話しない「無」の状態を引き起こしてしまい、遠隔授業における双方向性指向の脆弱性が確認できた。 一方、当初半期15回の授業時数のうち、約4分の1にあたる4回分の授業を予定していたが、想定以上に機材の老朽・陳腐化が早く、デリミタ非対応等の機材上のトラブルも多く発生した。しかし回線のブロードバンド化も進み、SkypeやFaceTime等のアプリも発達し、遠隔通信の専用機器とほぼ同程度まで性能が向上しており、今後は安価に設備設定も可能であることも確認できた。
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