研究課題/領域番号 |
24720283
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
稲田 奈津子 東京大学, 史料編纂所, 助教 (60376639)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 金石文 / 東アジア / 比較歴史学 / 服喪 / 見忌抄 / 喪葬儀礼 / 火葬 / 広開土王碑拓本 |
研究実績の概要 |
1、礼制・儀礼文化に関する基礎的研究としては、まず昨年度にひきつづき、服喪に関する史料の翻刻・検討をおこなった。宮内庁書陵部・尊経閣文庫・早稲田大学図書館などにおいて史料調査を実施するとともに、その成果の一部を論文「東京大学史料編纂所蔵『見忌抄』の紹介と翻刻」として発表した。その他の成果については次年度中に公表予定である。また、これまでの服喪研究の成果をふまえ、口頭報告“Between Protocol and Practice: The Emergence of Japanese Mortuary Practices”をおこなった。 2、日本古代の喪葬儀礼研究に関連して、論文「聖武天皇の葬列と純金観音像」および「日本古代の火葬―文献史料から見た」を発表するとともに、口頭報告「殯儀礼の再検討」において先行研究の見直しと新提言をおこない、また口頭報告「喪葬儀礼と文字資料―「大唐元陵儀注」を中心に―」「喪葬儀礼と文字資料―随葬衣物疏を中心に―」では出土文字資料から儀礼を復原することの可能性について論じた。 3、金石文資料やその拓本、その他の関連資料について、国内外での調査を実施した。国内では大阪歴史博物館・田山花袋記念文学館・山口県文書館・京都府立福知山高校など、国外では韓国の国立大邱博物館・国立中央博物館・弥勒寺址・永川菁堤碑・国立ハングル博物館・ソウル大学校奎章閣や、中国の吉林省集安市周辺史跡などで調査・踏査を実施した。またその成果の一部を「近年の日本における広開土王碑拓本の調査・研究について」と題して口頭報告した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
金石文資料に関する調査は、資料の状態や所蔵者の事情により、詳細な調査が困難な場合も少なくないが、本年度も貴重な調査機会を多く得ることができ、研究対象を柔軟に変更することで、その機会を活かすことができた。また礼制・儀礼文化に関する基礎的研究については、服喪や喪葬儀礼を中心に口頭報告や論文としてその成果を公表しつつあり、その過程で得た助言をもとに、最終年度の総括に向けた準備を進めている。
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今後の研究の推進方策 |
今年度も計画的に国内外の金石文資料の調査を継続するとともに、その成果を順次発表していく。また礼制・儀礼文化に関する基礎的研究については、これまでの蓄積を研究書としてまとめる予定である。それらの成果の上に、金石文研究を活用した礼制・儀礼文化研究の新たな手法の提示を最終的な目標としている。
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次年度使用額が生じた理由 |
年度末に米国における研究成果報告をおこなったが、折からの円安傾向などのため旅費が大幅に嵩むことが懸念されたので、余裕をもたせて旅費分を残すよう配慮したため。
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次年度使用額の使用計画 |
米国旅費捻出のために控えていた史料調査に加え、次年度も国内外における史料調査を複数予定しており、それらの計画を順次進めることで使用していく予定である。
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