本研究では、戦前台湾コーヒー栽培の発展において「帝国間ネットワーク」が重要な役割を担ったことを明らかにした。このネットワークを通じて、コーヒー木や技術が米国帝国準州ハワイから日本統治下台湾へと伝播し、その背景にはハワイでコーヒー栽培に従事していた日本人の移動が深く関わっていたことがわかった。 既存の日本帝国史研究や移民研究が日本帝国内もしくは帝国外への移動を重点的に扱ってきたのに対し、本研究では、帝国と帝国の境界を越えた移動とネットワークの生成に着目した。それにより、戦前の環太平洋地域の人・モノ・技術・知・資本の移動の多方向性と複雑性の一部を解明できたことに意義があると考える。
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