研究課題/領域番号 |
24720288
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
風間 亜紀子 東北大学, 文学研究科, 研究員 (70552488)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 日本古代史 / 寺院造営 / 正倉院文書 |
研究概要 |
本研究課題では、古代国家の寺院造営機構の解明をめざし、①正倉院文書に残る寺院造営関係史料を検討して造東大寺司の機構と運営を復原解明すること、②六国史や寺史史料、縁起等を検討して「造寺司」の時期的な重複関係や内部組織を明らかにする、という2つの具体的課題を設定している。当該年度は①に挙げた正倉院文書の検討を行う計画を立てた。 当該年度の成果としては、まず、正倉院文書を網羅的に検討して造営関係文書を抽出し、史料を検討した。その結果、東大寺を事例とした寺院造営を明らかにするには、東大寺造営がどのように行われたか造営関係文書から検討することと、造営主体である造東大寺司という官司がどのような機構で、どのように運営されていたか、という二つの課題の解決が必要であると思われた。換言すると、造営事業とその実行主体という二者である。 東大寺造営事業については、既に福山敏男氏による一連の研究が存在する。本研究課題では、福山氏の成果を参考にして、造営事業の中でも特に工人の動員体制という点に絞って検討を行った。その成果は「古代の作画事業と画工司―大仏殿廂絵作画の画工編成から―」と題した論文にまとめ、『古代文化』第65巻1号(2013年6月)への掲載が決定している。 造営機構については、造東大寺司の成立過程に注目し、その前身機構と造東大寺司成立直後の体制を検討した。その成果は「東大寺の創建と造東大寺司の成立」(東北史学会日本古代中世史部会、2012年10月)、「造東大寺司の成立―前身機構と初期体制を中心に―」(日本史研究会古代史部会、2012年11月)として学会で発表し、多くの研究者から有益な意見をいただいている。 本研究課題の進展に意義のある研究成果を挙げることができたと考えている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究課題では、古代国家の寺院造営機構の解明をめざし、①正倉院文書に残る寺院造営関係史料を検討して造東大寺司の機構と運営を復原解明すること、②六国史や寺史史料、縁起等を検討して「造寺司」の時期的な重複関係や内部組織を明らかにする、という2つの具体的課題を設定した。 当該年度は、そのうち①に取りかかった。①の課題解決には、造営事業の解明とその実行主体である造営機構の解明という二点が必要と思われた。「研究実績の概要」に書いたように、造営事業に関してはその成果を論文という形にまとめることができ、造営機構に関しても、既に口頭での学会報告を行っている。学会では貴重な意見を多く得ることができた。 日本古代史の史料自体が決して多くないという現状を鑑みるならば、質・量ともに豊富な一次史料群である正倉院文書は他に類をみない貴重な存在である。その正倉院文書に寺院造営関係の史料が多く遺されていることは、本研究課題にとって正に僥倖というべきである。しかし、文書の量が非常に多いため、正倉院文書全体を網羅した分析は困難であることが予想されていたが、当該年度の内にかなりの分析を進めることができた。また、研究発表を行う機会にも恵まれ、本研究課題にとって有益な年度になった。
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今後の研究の推進方策 |
今後の本研究課題では、現状では研究計画の変更は必要なく、当初の研究計画に沿って進めていく予定である。 次年度の本研究課題では二つの課題に取り組む。ひとつは、当該年度に学会で口頭発表した内容を基にして、成果を論文にまとめて発表することである。もう一つは、正倉院文書だけでなく日本古代史の文献史料を加えて、日本古代の寺院造営について研究を進めることである。使用する史料は、主に六国史、法制史料、寺史・縁起等を予定している。これらから寺院造営に関する史料を網羅的に収集し、データベースを整え、その検討を行う。特に、寺院の造営に関する記事、造寺司に関する記事、造寺司官人の位階・官職に関する記事については注目し、個別のデータベースを整える必要があると思われる。 また、史料に表れた造営寺院に関する考古学的な成果の収集にも努めたい。考古学からは主に二つの成果を収集したいと考えている。ひとつは遺構、出土遺物から文献史料との一致・不一致を確認し、文献史料の不足を補う情報を収集すること、もうひとつは瓦の系譜を寺院造営のデータベースに照らし合わせ、瓦工人の移動と寺院造営事業との関わりを確認する。 次年度中にはこれらのデータベースを完成させて最終年度に臨みたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額は、今年度の研究を効率的に推進したことに伴い発生した未使用額であり、平成25年度請求額とあわせ、平成25年度の研究遂行に使用する予定である。
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