平成26年度は、前年度に引き続き、慶長奥州地震津波に関する歴史資料を調査として、遠野市立博物館に所蔵されている山奈宗真関係史料をはじめとして、岩手県沿岸地域および宮城県における歴史資料の調査を実施した。特に山名宗真史料については、明治三陸地震津波直後に岩手県沿岸を巡回した後に記された『岩手県沿岸大海嘯取調書』の原本をはじめ、地域に残る伝承について記した『岩手県沿岸古地名考』や当時存在していた古文書を山奈が筆写した『岩手県海岸巡回古文書拾遺集』などについて写真撮影作業を実施した。また、山奈宗真関連史料や昨年度まで実施した史料撮影データを用いて、古文書の解読作業を実施した。 フィールドワークによる地域調査としては、岩手県沿岸地域において洋野町・野田村などの文化財関係機関や、宮古市重茂地区や多賀城市八幡地区において津波痕跡地点での聞き取り調査を実施した。また、歴史資料の記述から判明する津波痕跡点の地盤高測量においては、津波工学研究者とともに岩手県宮古市・山田町・大槌町や宮城県多賀城市などで実施した。 研究成果の発表については、第31回歴史地震研究会名古屋大会や第4回巨大津波災害に関する合同研究集会において報告するとともに、成果の一部を論文として『津波工学研究報告』および『歴史地震』に発表した。また本研究を通して得られた文理連携による歴史津波研究の知見については、第94回歴博フォーラム(於国立歴史博物館)や第10回人間文化研究情報資源共有化研究会などの機会において報告した。
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