本研究は、具体的な分析対象として、1945年から54年にかけて行われた昭和天皇の「戦後巡幸」を取り上げた。そこで、平成24年度においては、宮内庁書陵部宮内公文書館所蔵の『幸啓録』を再調査して、デジタルカメラによる資料の撮影を行った。また、大分県公文書館での関係資料の調査、巡幸記念誌の収集などを行った。 さらに戦後巡幸の訪問先の一覧表及び『幸啓録』の目次の目録化を行った。また、各地の巡幸記念誌を比較することで、巡幸に対する各地での奉迎の共通点及び相違点をまとめた。これらのデータは、これまできちんとまとめられていなかった戦後巡幸の基礎資料となるものであり、重要な意義を有している。 平成25年度においては、北海道内で発行された北海道新聞などの地方新聞の調査を国立国会図書館にて行った。また、秋田県公文書館での関係資料の調査を行い、富山県庁、奈良県庁、福岡県庁、北海道庁へは情報公開請求を行い、資料を入手した(ただし北海道は先方の作業が遅延したため、年度内に間に合わなかった)。 これを踏まえた上で、成果の発表を行った。まず戦後巡幸をきっかけとして1948年から49年にかけて行われた宮内府の組織改革(宮内庁への再編)について論文を執筆し、『一橋社会科学』に投稿し、審査を経て掲載された。また、戦後巡幸についての概説として、「象徴天皇制における行幸―昭和天皇「戦後巡幸」論」を執筆し、象徴天皇制研究会のメンバーによって出版した共著本に収録した。
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