研究課題/領域番号 |
24720297
|
研究機関 | 新潟大学 |
研究代表者 |
新城 道彦 新潟大学, 人文社会・教育科学系, 助教 (40553558)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2014-03-31
|
キーワード | 朝鮮王朝儀軌 / 王公族 / 共通法 / 戸籍 / 王公家軌範 |
研究概要 |
日本には1910年から47年まで、皇族、華族、一般臣民以外に、王族と公族(以下、二つを合わせて王公族と略記する)という身分が存在した。韓国併合によって〈日本〉に編入された韓国皇室のために、天皇が詔書を発して創設した身分のことである。 この王公族に関連して、近年重要な史料が宮内庁から韓国に引き渡された。「朝鮮王朝儀軌」である。儀軌は、王公族の法(王公家軌範)の整備と歴史書編纂のための基礎資料として日本に移管されたことがわかっている。しかし、実際に王公家軌範がどのように整備・運用されたのかわかっていないし、歴史書に関しては、実物すらいまだみつかっていない(ただし編纂された事実は宮内庁の紀要に記録されている)。 そこで、24年度は、①王公家軌範の制定と運用について宮内庁資料を分析しつつ、②歴史書の所在を調査した。 ①に関しては、王公家軌範の不備について考察した。すなわち、王公族が婚姻や養子縁組で内地の一般臣民の家に入ったのちに離婚・離縁した場合、戸籍をどこに移動したかについてである。一般臣民同士が離婚・離縁したならば、民法にもとづいて実家に復籍し、実家が廃滅して復籍できないときは一家(戸籍)を創立することになっていた。ところが、王公家軌範の第26条には、いったん王公族の身分を離れた者は再び王公家に戻れないとの規定があり、一般臣民のように実家に復籍できなかったのである。この問題がどのように解決されたか、共通法との関連から分析し、「王公族の離婚・離縁と戸籍の行方」という題目で『政治研究』第60号に発表した。また、この前提となる王公家軌範の制定に関しては、「王公族の創設と帝国の変容」という題目で、森山茂徳編『大韓帝国の保護と併合』(東京大学出版会)に発表した。 ②に関しては、儀軌以外に関連する資料を発見したので、今後分析を進めたい。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題は王公家軌範の整備と王公族の歴史書の編纂過程を解明することにある。このうち、前者は二つの論考を執筆し、ほぼ計画どおり課題を解決しつつある。ただし、後者に関しては史料が乏しく、いまだ不明な点が多い。25年度は後者に力点を置いて研究を進めれば、当初の計画をある程度達成できるはずである。
|
今後の研究の推進方策 |
24年度は宮内庁の王公族関連資料を大量に調査し、一部を入手することができた。25年度は残りの資料を入手する。また、韓国学中央研究院における調査で歴史書の編纂にかかわる史料がみつかったので、これも入手・分析する。
|
次年度の研究費の使用計画 |
宮内庁には王公族に関連する史料として「王公族録」という膨大な文書がある。24年度は時間の制約があり、これを半分ほどしか入手できなかったので、25年度は研究費をこの史料の収集に使いたい。 また韓国・東京における史料調査のため、引き続き旅費を確保したい。
|