研究課題/領域番号 |
24720298
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研究機関 | 静岡大学 |
研究代表者 |
今村 直樹 静岡大学, 人文社会科学部, 准教授 (50570727)
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キーワード | 金納郷士 / 地域社会 / 近世身分制 / 明治維新 / 熊本藩 |
研究概要 |
本研究は、近世身分制の解体と近代社会の生成をめぐる特質を探る目的から、永青文庫細川家資料における藩政史料を分析の中心にすえて、熊本藩領における金納郷士と村・地域社会との具体的関係、および金納郷士制の解体過程を、近世後期から明治前期までのタイムスパンで明らかにするものである。 研究2年目にあたる平成25年度は、当初の計画通り、細川家資料における藩政史料(主に「口書」)、熊本県内の個人(旧惣庄屋家)所有史料、熊本県政資料(県庁文書、熊本県立図書館所蔵)の調査・撮影・分析を実施した。その結果、明治前期における旧金納郷士と村・地域社会の動向、それと連動した当該期の熊本県の地方政策が具体的に明らかになった。 また、永青文庫に匹敵する史料群である伊豆韮山江川文庫の調査も継続し、近い将来における代官所関係史料(江川文庫)と惣庄屋関係史料(永青文庫)の比較検討を通じた、日本近世の地域行政に関する総合的研究に向けた準備を進めることができた。 以上で得た知見に関しては、「近世後期の手永会所と地域社会」(熊本大学文学部附属永青文庫研究センター主催シンポジウム「日本近世の領国地域社会」)、「幕末維新期の江川家と柏木忠俊」(静岡県地域史研究会2月例会)などで研究発表を行った。また、学術論文としても、「近世後期藩領国における地方役人の「出世」と「派閥」」(稲葉継陽・花岡興史・三澤純編『中近世の領主支配と民間社会』熊本出版文化会館、近刊予定)を公表することができ、前年度の研究成果2点(①「近代移行期熊本藩領の金納郷士と地域社会」日本史研究会12月例会報告、②「明治10年一揆後の地域社会と「付ケ火」」静岡県近代史研究会7月例会報告)についても、いずれも論文化して学術誌に投稿することができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本年度、当初の研究実施計画で予定していたのは、以下の6点である。 ①細川家資料における藩政史料(主に「口書」)の調査・撮影・分析、②熊本県内の個人所有史料、熊本県政資料(県庁文書、熊本県立図書館所蔵)の調査・撮影・分析、③高知県での高知藩郷士関係の文献・史料の調査、④永青文庫研究センター主催シンポジウムでの研究発表、⑤国内の研究会・学会等での研究発表、⑥学術論文の公表 上記のうち、③を除くすべてを、ほぼ達成することができた。①や②に関しては、「口書」や県政資料の量が予想以上に膨大であったため、すべて終了はできず、次年度に継続する部分もあるが、調査自体はおおむね順調に進展している。③に関しては未達成であるが、代わりに伊豆韮山江川文庫の調査を進めることができ、近世後期の幕領代官所行政に関する多くの知見を得ることができた。 総じて、当初における研究目的と研究実施計画は、おおむね順調に進展していると評価できる。
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今後の研究の推進方策 |
平成26年度に予定していた、当初の研究実施計画は以下の4点である。 ①細川家資料における藩政史料(平成24・25年度での未調査分)の調査・撮影・分析、②山口県での萩藩「御仕成」関係の史料・文献の調査、③国内の研究会・学会等での研究発表、④学術論文・学術書の公表・出版 このうち、平成26年度は①の計画を終了させることを第一目標とし、これまでの2年間で得た知見と併せて、③④のかたちで随時公表していくことを第二目標としたい。 ②に関しては、当初の計画を変更し、代わって伊豆韮山江川文庫の調査を行うことにしたい。江川文庫には、近世後期の代官所行政に関する史料が豊富に残されており、それは質量ともに、本研究の主たる分析対象である細川家資料の惣庄屋関係史料に匹敵するものである。両史料を比較検討することは、日本近世における地域行政の実態や、藩領・幕領における近代化の問題を考える上で極めて重要な意味をもつものであり、こうした近い将来の作業にむけた基盤整備も、併せて行っていきたい。
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