研究課題/領域番号 |
24720300
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研究機関 | 広島市立大学 |
研究代表者 |
桐谷 多恵子 広島市立大学, 付置研究所, 講師 (30625372)
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キーワード | 原子爆弾 / 被爆 / 被爆者 / 復興 / 違和感 / 地方行政 / 日本政府 / 占領軍 |
研究概要 |
本研究課題「被爆直後(1945-1948)の広島・長崎『復興』に関する研究――被爆者関係史料の発掘と復興史上の意義の考察――」は、1945年後半から1948年に対象時期を限定し、被爆者の実体験から広島・長崎両市の「復興」を歴史的に考察することを目的としている。 平成25年度の研究実施の報告として評価できる点は、広島・長崎両市の「復興」に関して、特に、既成の研究蓄積が乏しい時期の史料・証言を多々収集することができた点である。研究の対象時期に定めた、1945年~1948年の3年間は、被爆直後ゆえに被爆者が最も肉体的、精神的及び経済的に行政当局をはじめとして被爆していない人々に支援を求めた時期であったにもかかわらず、アメリカ占領軍によるプレスコードにより、被爆者は原爆被害を訴えることができず、更に、日本政府が戦後の急速な「復興」政策のもとで被爆者への医療面や生活面での援護は行わなかったという時期である。被爆問題を考察する上で、重要な時期であるにも関わらず、先行研究ではこの時期の研究が十分になされてきたとはいえない。そのような先行研究史史における本研究の意義は、被爆後3年間の史料(聞き取り調査も含めて)を収集することであり、平成25年度はその調査目的を計画以上に進展させることができた。具体的には、広島平和記念資料館、防衛省防衛研究所、国会図書館、長崎原爆資料館、長崎県立図書館において史料の収集を実施した。また、聞き取り調査においては、地区別の復興状況に関する証言収集を行った。更に、復興事業に携わった人物のご遺族にご協力いただき、個人史料を調査することができた。 以上、研究課題を進展させることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は、被爆直後(1945-1948)の広島・長崎「復興」に関する史料の発掘と復興史上の意義の考察である。本年度は、被爆後数年間の広島・長崎の「復興」に関する史料・証言を収集することに集中したが、当初の計画以上に研究を進展することができた。特に、個人が保管している史料を確認することができ、また、ご遺族のご協力をいただき、実際に調査することができたことは研究において大きな進展となった。また、復興状況に詳しい被爆者に聞き取り調査を行うことができ、被爆者の実体験から広島・長崎両市の「復興」を歴史的に考察するという研究目的を当初の計画以上に発展させることができた。
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今後の研究の推進方策 |
被爆者や復興事業に携わった関係者への聴き取り調査は、高齢のために一刻を争う状況にある。聴き取り調査を通して得られる新たな知見は貴重であり、関係者が存命の間に取組まなければならない現時点での重要な課題である。26年度の推進方策については、特に、被爆者や復興事業に関わった人物への聞き取り調査に力を入れて調査を実施する予定である。 史料に関しては、引き続き、広島市立中央図書館、広島市公文書館、広島平和記念資料館、防衛省防衛研究所、国立国会図書館、長崎原爆資料館、長崎県立図書館において調査する予定である。
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次年度の研究費の使用計画 |
次年度使用額が生じた一つの理由は、史料のコピー代に関してである。研究の対象時期が被爆後数年間であるため、関連の一次史料に関しては、コピーを直接にすることは不可能であり、デジタルカメラでの撮影となっている。このため、コピー代は当初計画していたよりも経費がかからない状況が生じている。 聞き取り調査における謝礼金も予算に組み込んでいるが、被爆者のかた(学生時代からお世話になっている方々)をはじめとして、研究調査でご協力いただいた方が謝礼金を辞退される事が多く、支払い(の判断)が困難である。更に、謝礼金に関しては、聞き取り調査のテープ起こし等の調査補助を行うことを予算に組み込んでいたが、個人情報を含む大切な史料であるために、自らでテープ起こしの作業を行ってきた。そのために調査補助の謝礼金も使用する機会がなかった。 以上が大きな理由として挙げられる。 以上の理由に対して、26年度においては、当初の計画通りでは調査が足りなかった、長崎での調査に使用する計画を第一案としてあげる。また、テープ起こしの作業は、想像以上に時間がかかるため、やはり研究補助が必要な面があり、謝礼金として使用することも計画とする。また、研究課題と関連する研究書が近年出版されているため、図書購入費としても使用する計画である。
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