研究課題/領域番号 |
24720305
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研究機関 | 明治大学 |
研究代表者 |
山田 彩起子 明治大学, 文学部, その他 (80573956)
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キーワード | 女院 / 后 / 女房 / 文化圏 |
研究概要 |
中世前期の女院・后(以下、両者を総称して「女性院宮」の語を用いる)のうち、天皇や院の后妃の経歴を持つ者の女性院宮としての出発点は、天皇・院・東宮との婚姻である(中世前期においては、この婚姻を経た者のほぼ全てが後に女性院宮となっている)。したがって、この婚姻儀礼に関与した者(女房や家政機関職員として婚姻儀礼に奉仕した者・婚姻儀礼の用途調達者もしくは組織)のあり方を具体的に解明することは、出発点に立った女性院宮を取り巻く環境を描き出す一助になると考えられる。女性院宮が置かれた環境を明らかにすることは、彼女達の文化圏の研究のためにも不可欠であるため、女性院宮の婚姻儀礼について考察した(以下では天皇との婚姻儀礼を「入内」、東宮との婚姻儀礼を「入宮」と各々表記する。なお、院の婚姻儀礼関連史料は非常に乏しいため、天皇・東宮の婚姻儀礼のみを検討対象とした)。まずは用途について。用途調達方法は、諸国所課の他、入内・入宮者(もしくはその親兄弟)の家政機関(或いはその職員)・入内・入宮者の近親者による訪など様々である。このうち公的性格が強いのは前者であるが、これはほぼ、入内・入宮者の関係者(近親者・出仕者等)以外の者も関わる饗饌・禄物(入内・入宮儀礼の会場で催され、多数の貴族が出席する饗宴の膳及び出席者が賜る禄物)の調達のみに用いられる方法である。一方、私的な性格を持つ後者は、入内・入宮者の出立所で催される饗宴や入内・入宮者づきの女房の装束等、入内・入宮者の関係者のみに関わるものの調達に用いられている。つまり、公的な用途調達方法の活用は、入内・入宮者にとってごく限られていたのである。次に家政機関職員と女房の奉仕の在り方について見ると、彼らの出自に応じた役割分担が非常に鮮明である。入内・入宮儀礼に見えるこのような役割の差が文化圏形成にはどのような影響を及ぼすのか、今後明らかにしてゆきたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
①一昨年度及び昨年度に「女性院宮の女房を平安時代中期にまで遡って検討し直す必要性」が生じたことによる影響、②今年度に女性院宮の出発点における環境を解明する必要性が生じたこと、③鎌倉時代初期における女性院宮と摂関家両方に仕える文化人(歌人等)に関する現存史料が予想以上に断片的だったため、女性院宮と摂関家両文化圏の関係を明らかにできなかったこと。
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今後の研究の推進方策 |
鎌倉時代中後期に多くの女性院宮を輩出した西園寺家或いは同家出身の女性院宮の宮廷文化への貢献のあり方を、古記録や和歌関連文献の調査を通して解明する。
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次年度の研究費の使用計画 |
当初は京都での史料調査を行う予定であったが、京都の研究機関で所蔵されている史料が、東京大学史料編纂所で写真帳としておさめられており、そちらで史料調査を済ませられたことが、平成26年度使用額が発生した理由と考えられる。 平成26年度は、当初の予定よりも多くの書籍を買う必要が生じたので、そちらに平成25年度の未使用額を充てる予定である。
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