研究課題/領域番号 |
24720307
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
野口 真広 早稲田大学, アジア研究機構, 招聘研究員 (30386560)
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キーワード | 歴史認識 / 靖国 / 植民地 / 国際情報交換 / 台湾 / 朝鮮 / 中国 |
研究概要 |
植民地政策の清算が行政機関や歴史学者によって議論されるのとは別に、一般の人々が日本の植民地政策について多様な議論をするような傾向が年々強まっている。政策史の事例分析を進めても、歴史認識形成過程において、断片的な政策評価が国家観の歴史像に大きな影響を与えうる懸念がある。 そこで、行政機関内の戦後歴史認識と歴史学者の政策史検証との他に、世論による政策史評価という観点を追加し、植民地歴史像を形成する主体を三者の観点から論じるための研究を進めた。同様な問題関心を持つ研究者とアジア歴史認識研究会を起ち上げ、継続的に議論を進め、年度末には所属機関のシンポジウムで報告を行った。 シンポジウムの内容は、紀要論文としてもまとめられた。概要を記せば、日中韓は互いの歴史認識への批判を国民同士が目標にせず、なぜ対立する歴史認識が生まれるのかというそれぞれの置かれた状況に関心を持つことこそが必要であると訴えた。歴史認識を必要とする自分たちの認識の在り方を客観的に把握することで、歴史認識問題の隘路から脱し、ようやく本当に他国との対話を始めることができるのではないだろうか。 現在の日中韓各国を外から見る限りでは、日本に限らずどの国も他国に不寛容な社会であることが問題である。歴史認識の問題に取り組むことは、他者に対する恐れと不信感を自分がどれだけ持っているのかと向き合うことでもある。 政策史の評価をする際、政策立案者・日本国民・植民地人という多様な主体から見た評価があり得る。一つの立場に固執し、その他の人々を無視する時、抑圧の構造が生まれる。自分の置かれた社会的立場を置き換える発想が必要である。自他の境界を支える政治性に固着し、優越的な立場を作り出す構造に警戒することが、政策史評価の前提になることが分かった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
韓国・台湾における聞き取り対象の発掘が難航しており、現地研究者による既存の聞き取りの再検証という形を取らざるをえないこと。また台湾における楊肇嘉の資料公開が遅れており、政策立案過程において現地当局と現地人の協力と対立の過程を検証する上で、本研究にとっては重大な遅れをもたらしているため。
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今後の研究の推進方策 |
現地研究者へ協力を依頼したり、日本に在住する韓国・台湾の研究者に依頼して調査することで、資料収集の負担を軽減することを予定している。
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次年度の研究費の使用計画 |
国外調査旅行が計画通りに実行できなかったため、関連して調査・謝金費用が余ったことによる。 国内外の研究補助者への謝金・出張費用などに充てるとともに、年度末に研究会を開いて成果報告をする場を設けるための運営費に充てる予定。
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