研究課題/領域番号 |
24720307
|
研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
野口 真広 早稲田大学, アジア研究機構, 招聘研究員 (30386560)
|
研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
|
キーワード | 国際情報交換 / 公文書調査 / 植民地政策 / 植民地官僚 / 行政史 / 地方自治 |
研究実績の概要 |
本年度は台湾と韓国への調査と研究協力者との意見交換を行うとともに、成果の一部を出版するための準備を進めた。 台湾では、中央研究院臺灣史研究所において、台湾人地方政治家である楊肇嘉の残した資料集「六然居典蔵」の調査を進めた。楊肇嘉については、回顧録、新聞雑誌などの二次資料も併せて収集し、その成果は早稲田大学出版部より『留学生の早稲田大学―知の接触領域としての近代日本の大学―』(仮)として近日中に刊行する予定である。台湾人の政治運動が、日本留学による日本人植民地政策学者(泉哲、山本美越乃、矢内原忠雄、浅見登郎など)からの影響を受け、実際の政治活動への傾斜を深めていく過程を考察した。 台湾における聞き取り調査対象については、中央研究院を含め研究協力者に依頼中である。 韓国では、国家記録院や国史編纂委員会での資料調査を進めるとともに、金性洙や崔南善に関連する古書の収集と調査も行った。両者は文化人・政治家でありながらも一方で出版業に携わった実業家でもあった。日本敗戦後の解放後、両者は親日派の経歴を持ちつつも、政治の中枢で活躍した。現在では親日派という面からの批判もあるが、日本時代の近代化事業に関わった功績が評価されてもいる。親日派の功罪の議論から、日本統治の戦後の公的評価の在り方を考察した。 第一次世界大戦後は、世界的な植民地政策の転換が進み、一方で日本統治下の開発進展と合わさったが、ここから一意的な正の評価が生まれるわけではない。次年度早々に聞き取り調査ができる準備を進めているので、被支配者の当事者的視点から日本時代の開発を検討する予定である。開発の経済的な成果と政治的な評価の乖離については、朝鮮史における近代化論批判を参考にしつつ、調査研究を継続する。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
聞き取り調査の対象者選定と候補者への協力依頼に時間がかかっていること。および台湾における関連重要資料の公開が当初の予定よりも大幅に遅れたため、資料調査を延期せざるをえなかったため。
|
今後の研究の推進方策 |
聞き取り調査対象者からの協力承諾を得ることができたので、必要に応じて複数回の調査出張を行う予定。聞き取り調査やそのほかの関連一時資料と植民地政策の評価にかかわる公文書との対比を進める。
|
次年度使用額が生じた理由 |
台湾における重要な関連資料(「六然居典蔵」)の公開が遅れ、予定した資料調査が十分に進まなかったこと、および聞き取り調査の協力者の選定と協力依頼が予期していたよりも時間がかかっているため。
|
次年度使用額の使用計画 |
1.台湾における重要な関連資料(「六然居典蔵」の資料調査に使用する。 2.聞き取り調査対象への訪問のための出張費用として使用する。 韓国においては、聞き取り対象からはすでに了解を得ているので、調査訪問の出張費に使用する。また台湾においては中央研究院などの研究機関に所属する研究協力者からの支援を受け、選定作業を進めているので、近日中に協力者を選び、調査訪問する予定である。
|
備考 |
本研究所は歴史認識問題と東アジア国際関係の研究成果を生かし、歴史と外交の二つの視点から東アジアの国際関係が抱えている問題に引き続き取り組む。具体的には、研究者相互のネットワークの一層の緊密化や相互理解を進める場の連携を進める。また、国境を越えた研究者の集まりが、歴史認識問題の解決のために、三カ国に向けて学術的な建設的提言を行うことにも努める。
|