研究課題/領域番号 |
24720308
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 中京大学 |
研究代表者 |
小原 嘉記 中京大学, 国際教養学部, 准教授 (40609202)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | 国衙 / 在庁官人 / 雑任 / 国司就任儀礼 |
研究概要 |
平成24年度は以下の研究に従事した。①平安時代雑任データベースの作成、②国衙の儀礼と政務の歴史的分析、③荘園史料群の集中的分析(東大寺領伊賀国黒田荘・玉滝荘)、④仁和寺文書の調査・検討、⑤西山地蔵院文書の調査・検討。 ①②が主要な作業となるが、①はデータベースの作成を継続的に進めており、本年度は9世紀~11世紀半ばまでの史料の大方を入力するとともに、②の分析作業を進めるためにこれを活用した。また、②については、考古学における国府発掘の成果と文献の記述の総合的な理解を提示することを目指した。国衙の儀礼・政務に関する先行研究は、文献史料も僅少なことから、近年ではほとんど進展はみられなかった分野であるが、周知の国司就任儀礼マニュアルと呼ぶべき文献を従来とは異なった角度から読み解く作業を行うことで、既往の研究を克服するとともに、新たな解釈・理解を提示することに成功した。その成果については、学術論文として発表することができた(小原嘉記「国衙の儀礼と政務」〔遠藤基郎編『生活と文化の歴史学2 年中行事・仏事・神事』竹林都舎、2013年〕)。 ③は個別荘園について史料を網羅的に収集・分析し、同一地域における在地の構造の変化を通時的に捉えて考察を進める素地を作った。作業の成果については、できるだけ早くにまとめられるよう努めたい。なお、この作業は、①のデータベースの成果と有機的に連関させることで、考察の進展に大きな効果が期待できる。 ④⑤は個別史料群ごとの分析作業である。④については、史料を翻刻した刊本(『仁和寺史料 古文書編一』奈良文化財研究所編、2013年)の公刊に寄与し、⑤については、これまでの研究成果についてほぼまとめ終わった段階であり、近いうちに公刊できるように形を整えたい。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
史料の抽出・整理および分析は順調なペースで行っており、平成24年度の作業実績としてはほぼ当初の目標に達している。また、作業にもとづく研究成果も学会報告や学術論文などの形で発表できたので、初年度における本研究の達成度としては十分に満足のいく結果を残すことができたといえるだろう。
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今後の研究の推進方策 |
基本的には平成24年度の作業を継続して行い、特に雑任データベースの入力作業のペースをあげ、その完成を目指していきたい。またその作業を通じて、今年度は新たに国・郡・在地レベルの検断関係の史料を収集することを行いたい。この作業は、鎌倉時代の守護・地頭と平安時代の国衙雑色人層の比較検討の素材とするためである。 また、個別荘園史料(東大寺領伊賀国黒田荘・玉滝荘)の集中的分析、個別史料群の分析(西山地蔵院文書など)を引き続き進めていき、それらの成果を発表することに努めたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
本年度の研究費は、調査用のノートパソコン、資史料整理用のスキャナ、研究遂行上に必要となる資史料・図書、調査旅費に使用した。研究開始時に購入を予定していたソフトウェアや文具類は、今年度に関しては特に必要とはならなかったため、当初の予定より研究費の支出額が抑えられることになった。 翌年度の研究費は、次年度分として請求した助成金とあわせて、①資史料・図書の収集、②研究の工具書類の整備、③調査旅費、④データ整理用の文具・消耗品・ソフトウェアなどに充てる予定である。
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