研究課題/領域番号 |
24720311
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研究機関 | 国立歴史民俗博物館 |
研究代表者 |
高田 宗平 国立歴史民俗博物館, 大学共同利用機関等の部局等, 研究員 (80597188)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2016-03-31
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キーワード | 漢籍 / 漢学 / 漢籍受容史 / 旧鈔本 / 古鈔本 / 古写本 / 『論語義疏』 |
研究実績の概要 |
本年度は、(1)日本中世における『論語義疏』の受容、(2)日本中世の禁裏・公家周辺における漢籍受容・漢学講究、(3)鎌倉時代の仏家における漢籍受容・漢学講究のそれぞれについて検討した。 (1)日本中世における『論語義疏』の受容については、中世に撰述された典籍(中世典籍)を可能な限り善本を実見調査した上で、最善本に依拠し、中世典籍所引『論語義疏』と旧鈔本『論語義疏』との異同を検討した。併せて、『論語義疏』の引用文が認められる中世典籍の個別の写本の伝来や書誌事項など書誌学的な検討も行った。『論語義疏』は11世紀以降、仏家による受容が顕著になり、この傾向は中世へ連綿と続いていくことなどを明らかにした。(2)日本中世の禁裏・公家周辺における漢籍受容・漢学講究については、平成25年度及び同26年度に蒐集した、国立歴史民俗博物館所蔵廣橋家旧蔵記録文書典籍類の年号勘文資料の画像と書誌事項に基づき、一部資料の写本の性格、勘申者などについて検討し、明らかにしつつある。また、京都大学総合博物館所蔵勧修寺家文書の年号勘文類は昨年度入手した紙焼き写真を用いて、一部の資料を翻字した。(3)鎌倉時代の仏家における漢籍受容・漢学講究については、①金沢文庫保管の称名寺聖教のうち、漢籍受容・漢学講究の徴証となる資料をいくつか翻字し、資料の伝来・内容などを検討し、②昨年度に引き続き、天野山金剛寺所蔵の漢籍・準漢籍類の一部について書誌学的検討と伝来について検討し、各々明らかにした。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
(1)日本中世における『論語義疏』の受容については、おおむね計画通りに調査を進め、且つ成果を挙げることもできた。すなわち、平成26年度末に刊行予定であった単著『日本古代『論語義疏』受容史の研究』(刊行は平成27年度5月予定となった)の執筆に際し、多くの成果を活かすことができた。 (2)日本中世の禁裏・公家周辺における漢籍受容・漢学講究については、国立歴史民俗博物館所蔵廣橋家旧蔵記録文書典籍類の年号勘文資料の予備調査を進めることができた。京都大学総合博物館所蔵勧修寺家文書の年号勘文類は、一部の資料について個別的検討を行った。 (3)鎌倉時代の仏家における漢籍受容・漢学講究については、①金沢文庫保管の称名寺聖教の一部を翻字と伝来の検討を行い、②天野山金剛寺所蔵の漢籍・準漢籍類の一部を書誌学的検討と伝来の検討を行った。②は公表する準備が調った。これにより、更に天野山金剛寺所蔵の漢籍・準漢籍類の予備調査を進めることができた。 なお、(2)と(3)の成果も上記の単著執筆に活かされている。
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今後の研究の推進方策 |
日本中世における『論語義疏』の受容については、引き続き調査を進め、更に進化させていきたい。廣橋家旧蔵記録文書典籍類及び勧修寺家文書の両資料群に含まれる年号勘文資料と称名寺聖教の漢籍受容・漢学講究に関する資料は点数が厖大であるため、全てに及ぶ予備調査は見送らざるを得ず、従って重点的に調査する資料を選定して、調査・検討していきたい。天野山金剛寺所蔵の漢籍・準漢籍類の調査は、平成27年度中に目処を付け、書誌解題稿の完成を目指したい。
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