本年度は、昨年度に引き続き、(1)中世における『論語義疏』の受容、(2)中世の公家・官人における漢籍受容・漢学講究、(3)鎌倉時代の仏家における漢籍受容・漢学講究、25年度に引き続き、(4)院政期の藤原頼長の漢籍受容・漢学講究を検討した。(1)中世における『論語義疏』受容者・受容層を検討し、真言、真言律、華厳などの僧侶、官人などに受容され、広く仏家などに受容されたことを明らかにした。これについては、国際学術会議「西域與東瀛―中古時代經典寫本國際學術研討會」(於 上海師範大学)にて、「日本中世《論語義疏》受容史初探」として口頭発表した。(2)平成25年度から紙焼き写真や画像を蒐集してきた国立歴史民俗博物館所蔵廣橋家旧蔵記録文書典籍類及び京都大学総合博物館所蔵勧修家文書の改元・年号勘文資料と、(3)昨年度に引き続き、金沢文庫保管称名寺聖教の漢籍受容・漢学講究の徴証となる資料を翻字し、引用漢籍などを明らかにし、予備的調査を推進させた。(4)頼長の日記『台記』から漢籍受容・漢学講究に関する事項を抽出し、データ化を推進させた。特に、本年度、国際学術会議「西域與東瀛―中古時代經典寫本國際學術研討會」に招聘され、口頭発表したことは国際的学術交流の面からも意義がある。当該学術会議では、上記の通り口頭発表し、更に大会総括・閉幕式にてパネリストとして日本中世漢籍受容史・漢学史研究の意義を大いに提唱した。中国で開催され、経学、敦煌学・吐魯番学、中国古典学などの専家が出席した国際学術会議にて、日本漢籍受容史・漢学史を日本の歴史に位置付けて研究する重要性を提唱することができたことは意義深い。また席上にて、上海交通大学人文学院特聘教授 虞万里氏、浙江大学古籍研究所教授 許建平氏、上海師範大学哲学学院教授 石立善氏、南京大学文学院副教授 童嶺氏と親しく情報交換でき、指教を受け、新たな知見を得た。
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