研究課題/領域番号 |
24720317
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研究機関 | 宮城教育大学 |
研究代表者 |
箱田 恵子 宮城教育大学, 教育学部, 准教授 (50569233)
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キーワード | 中国近代外交 / 外交官 / 門戸開放主義 |
研究概要 |
本年度はまず、前年度末に香港大学で調査・収集を行なったPeking Daily Newsの分析を行なった。この新聞が刊行された時期(1909年5月)、清朝は日本との満洲問題に関わる外交問題を仲裁裁判に付託する意向を示し、日本を牽制しており、日本に清朝の主権の尊重と門戸開放主義の南満洲への適用を主張していた。Peking Daily News というこの英字新聞でも、仲裁裁判への付託の正当性や門戸開放主義の適用をアピールする論説が目立っており、同時期の他の外国新聞への反論も多い。外国新聞の関連記事と照らし合わせ、清朝の国際的アピールの様相を確認するとともに、清朝および日、英、米の外交文書を調査、交渉経緯とこれらの記事との関係を整理中である。 また、本年度は上海図書館で1909年頃に外務部侍郎であった鄒嘉来の日記を調査した。上海図書館には彼の日記の1908年~1910年部分が所蔵されているが、1909年は制度改革が落ち着くとともに、外務部に性格的変化が窺われる時期である。この時期の鄒嘉来の日記の分析を通じ、日本との交渉を清朝サイドから確認するとともに、外務部の変化について検討した。 また、この時期の仲裁裁判への付託や門戸開放主義への対応を検討するにあたり、これまで申請者が研究してきた19世紀後半の国際法受容や国際情勢への認識・姿勢と比較することで、1909年ごろの清朝外務部の国際認識・対応の性格を捉えるとともに、19世紀から20世紀に至る清朝外交の変容とその特質を理解できると考え、19世紀の清朝外交官の薛福成の国際法や国際情勢に対する認識および彼の対応について再検討を加えた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
初年度に日中関係の緊張を受け、夏に予定していたPeking Daily Newsの調査を年度末に変更したしたため、初年度にある程度行なうはずであった当該新聞の分析が本年度に持ちこされた。ただ、Peking Daily Newsの分析や鄒嘉来の日記の調査・分析を通じ、1909年前後の清朝外務部の門戸開放主義への対応について、仲裁裁判への付託という彼らの行動を、19世紀後半からの国際法・国際情勢への認識・姿勢との比較から検討する視点を得られた。以前の研究課題との連続性をもった具体的な事例を設定できたことで、最終年度の研究の方向性を見出すことはできたとは考えている。よって、「やや遅れている」と評価した。
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今後の研究の推進方策 |
これまで、Peking Daily Newsの分析を通じ、1909年の創刊当時、清朝が日本との満洲問題を仲裁裁判に付託することの正当性を国際的にアピールをしていたことを確認し、関連の外国新聞の記事や外交文書の収集・整理を行なってきた。今後は、この外交交渉を中心として、交渉経緯や関連諸国の対応の詳細を解明し、外交官らの認識を検討するとともに、その際に19世紀後半からの国際法の受容や国際情勢に対する清朝外交官の認識・姿勢との比較という視点から、仲裁裁判付託の背景、その影響などを論じることととする。本年度は北京で国際学会が開催される予定であるため、そこで研究成果を報告する予定であるが、国際会議の開催や日本側の参加について、不確定な部分もあるため、論考としてまとめ公表することも検討している。
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次年度の研究費の使用計画 |
予算通りに執行したつもりだったが、申請者が見積もりより若干安く購入できたことを見落としていたため、869円の差額が生じてしまった。 869円の少額なので、消耗品の購入にあてるつもりである。
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