研究課題/領域番号 |
24720320
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
佐々木 紳 東京大学, 人文社会系研究科, 研究員 (50587938)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | オスマン帝国 / ムスリム知識人 / 帝国意識 / 文明意識 / 定期刊行物 / パン・イスラーム主義 / 国際研究者交流 |
研究概要 |
本研究は、19世紀後半のオスマン帝国のムスリム知識人の言説に見える帝国意識や文明意識のあり方を明らかにすることを目的としている。具体的には、当時のムスリム知識人がオスマン帝国の内外で発行した新聞・雑誌・パンフレットなどの刊行物を一次史料として、当時のオスマン帝国が抱えていた国内状況や、置かれていた世界史的文脈にも留意しながら、その帝国意識や文明意識のあり方を考察する。 当該年度の国内での活動として、論文1本と研究動向(読書案内)1本を発表した。佐々木紳「オスマン帝国と中央アジア――アリ・スアーヴィーのまなざしから」『海外事情』60/9(2012年、49-60頁)では、本研究の主たる一次史料の一つであるオスマン・トルコ語新聞『洞察』の報道や論説を用いて、オスマン・ムスリムの知識人の中央アジアに対する関心のあり方の変化を論じた。佐々木紳「近代トルコの思索者たち」『歴史と地理――世界史の研究』223(2012年、32-35頁)では、本研究で注目するパン・イスラーム主義も含めたトルコ近代思想史に関連する書籍を幅広く取り上げ、当該分野の成果を広く社会に紹介した。 当該年度の国外での活動として、上記の『洞察』を含むオスマン・トルコ語の定期刊行物および関連資料の調査・収集を目的として、2013年3月3日から11日まで、トルコ共和国イスタンブルに出張した。当初はアンカラでの滞在も含めて1か月間の出張を予定していたが、年度末の1週間程度に予定を変更せざるを得ず、短期間で効率よく作業をおこなうために、調査場所をアタテュルク図書館、ミッレト図書館、イスラーム研究センター(ISAM)にしぼって、定期刊行物史料や近代に作成された旅行記・地理書を閲覧・収集した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国内では、オスマン・ムスリムの知識人の思想的営為に関する論文の作成に加えて、トルコ近代思想史に関連する研究動向の紹介もおこなうなど、バランスの取れた活動ができ、おおむね順調に進展している。国外では、当初予定していた出張期間を大幅に短縮せざるを得ず、滞在地をイスタンブルのみとし、作業場所もアタテュルク図書館やイスラーム研究センターなど限られたものとなった。しかし、どの施設でも史資料のデジタル画像化が進んでおり、PDF画像を購入するなど入手自体に困難はなかった。また、ウェブ上で所蔵資料のデジタル画像を公開するサービスも発達し、当該年度もイスタンブルのベヤズト図書館、アンカラの国立図書館、エルズルムのアタテュルク大学などのサービスを活用した。このため、新史料の発見など研究の大幅な進展は見込めなかったものの、所期の史料収集、とくに本研究の主要一次史料たる『洞察』の収集はおおむね達成された。全体として、研究は順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
国内では、帝国論や文明論に関連する理論的蓄積と、オスマン・トルコ語の定期刊行物をはじめとする史料の収集と分析を進め、前年度からの作業を継続的に発展させる。とくに平成25年度以降は、史料の言説分析に重点を移し、オスマン・ムスリムの知識人たちの帝国意識や文明意識の態様の解明を進める。さらに、オスマン知識人のパン・イスラーム論議に関する情報が蓄積されてきたので、これについての査読論文を平成25年度中に作成できればと考えている。 国外での活動として、当該年度も史料の調査・収集のため、トルコ共和国での1か月程度の出張を予定する。前年度に実施できなかったアンカラでの史料調査・収集も、この間にあわせて実施する。加えて、平成25年度中(ないし26年度前半)に、イギリスまたはフランスにて、外国新聞の調査・収集のための出張を予定し、ヨーロッパ諸国をはじめとする当時の国際社会がオスマン帝国に向けたまなざしの解明を試みる。
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次年度の研究費の使用計画 |
本研究は、オスマン・トルコ語の定期刊行物を主たる一次史料とする外国史研究である。そのため、研究費の大半は、国外における史資料の調査・収集のための旅費、ならびに史資料・研究文献等の物品費に使用する。とくに当該年度は、トルコ共和国に加えてヨーロッパ諸国への出張を予定しているため、旅費への支出が増えることが見込まれる。出張の規模が縮小した場合には、その分の予算を史資料画像の購入等にあてることで、作業の遅れを最小限にとどめることとする。
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