研究実績の概要 |
本研究は、19世紀のオスマン帝国で活動したムスリム知識人の言説に見える帝国意識や文明意識のあり方を明らかにすることをめざしている。具体的には、当時のオスマン・ムスリムの知識人が帝国の内外で発行した新聞・雑誌・パンフレットなどの刊行物を分析することで、当時のオスマン帝国が抱えていた諸問題および世界史的文脈にも留意して、彼らが抱いていたと考えられる帝国意識・文明意識のあり方を考察するものである。 当該年度の成果として、論文1本を発表し、学会発表(国際シンポジウム)1回をおこなった。このうち、論文「オスマン憲政史の新しい射程:近世史と近代史の接合に向けて」『新しい歴史学のために』第285号(2014年)では、本研究の前年度の活動のなかで明らかにした、近代オスマン帝国の立憲主義と帝国意識との密接なかかわりを踏まえつつ、オスマン版の立憲主義の伝統が16世紀後半以降の近世から近代まで連綿と受け継がれ、発展させられてきたことを明らかにした。学会発表"After the Second Empire: New Horizons of Ottoman Constitutional History," The Third International Symposium Inter-Asia Research Networks (Toyo Bunko, Tokyo, 2015)では、前掲論文「オスマン憲政史の新しい射程」のエッセンスをまとめ、国際シンポジウムの場で発表することで、本研究の成果の一部を欧米・中東・東アジア等の研究者に広く発信し、当該テーマに関して比較と連関の観点から有益な意見交換をおこなうことができた。 なお、当該年度の研究計画に沿って、2014年9月1日から同14日まで、本研究の遂行にかかわる史資料の調査・収集を目的として、トルコ共和国イスタンブルに出張した。
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