本研究では、清代重慶の行政公文書『巴県档案』の閲読、データ整理を通じて、清代後期における女性が関係する訴訟の実態を調査し、案件事由の傾向を考察した。その結果、夫が訴訟の主たる発動者であることや、法的な制限にもかかわらず、妻からの訴訟がしばしば見られることが分かった。 これと並行して『巴県档案』の寺廟関係档案を中心に清代重慶の地域史を調査し、訴訟を多発させる社会的背景を分析した。農村部において女性に関する訴訟が多かった地域では、寺廟をめぐる有力者たちの紛争があったことも確認できた。また都市部の城隍廟などとの比較により、農村部には都市と異なる宗教的空間が存在する実態の分析も進んだ。
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