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2012 年度 実施状況報告書

中世後期アラブ世界の書物・図書館・読書

研究課題

研究課題/領域番号 24720331
研究種目

若手研究(B)

研究機関甲南大学

研究代表者

中町 信孝  甲南大学, 文学部, 准教授 (70465384)

研究期間 (年度) 2012-04-01 – 2015-03-31
キーワードイスラーム史 / 文献学 / ワクフ文書 / 国際情報交換 / アメリカ
研究概要

当該年度は、上半期は日本国内において予備調査を行い、下半期は米国シカゴ大学において招聘研究員として在外研究を行った。シカゴ大学ではJ.ウッズ教授、F.ドナー教授他、若手の研究者と交流し、また11月に参加した北米中東学会(MESA)においても米国内外から集まった研究者と意見交換を行った。このような交流活動を通して、現在学会で注目を集めている「サマーウ」(聴講記録)史料群の有用性に大いに気づかされた。これは本研究が掲げる「手稿本史料の文書的利用」と軌を一にするものであり、本研究の対象である「ワクフ」と併せて検討することで、当時の書物のあり方についてより詳細なデータを抽出しうるとの認識を抱くに至った。
そのような観点から、当該年度はシカゴ大学付属リーゲンスタイン図書館が所蔵する刊本、研究書を閲覧し、今後の分析に利用できる体制を整えることに専念した。それにより、これまでに刊行されたワクフやサマーウにかんする先行研究、および新たに刊行されたサマーウ目録などの史料を入手することができた。また、同図書館が所蔵する中世エジプト・ワクフ文書のマイクロフィルム、および、すでに校訂出版されている同文書の刊本を閲覧し、本研究が対象とする文書史料を可能な限り収拾することができた。これらの資料収集は、次年度以降のワクフ、サマーウ分析の基盤を準備したこととなる。
さらに、当該年度は英文による研究論文を一点発表した。これはすでに発表した、手稿本ワクフを用いた知識人のライフコース研究の改訂版であるが、このような非和文による成果発表は、海外の研究者との意見交換には欠かせないものである。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

「サマーウ」史料群の豊富な研究蓄積と出会ったことは、本研究にとっての大きな収穫であったが、それと同時に当初の研究計画にもこの新たな知見を取り入れる必要が生じた。「サマーウ」は、手稿本に付された文書的史料であるという点で「ワクフ文書」と共通点を持つが、そもそも別種の史料であり、両者を総合的に比較検討することが本研究の目的には欠かせないと考えられるからである。
また、シカゴ大学におけるマイクロフィルム調査は実りの多いものではあったが、それにより必要なワクフ文書のすべてを収拾するには至らず、新たな課題が浮かび上がることとなった。特に、ワクフ文書にかんしてはエジプト国立文書館所蔵のコレクションを確認することが重要である。
さらに、海外の研究者との意見交換のためには、こちらの研究が日本語ではなく英語等外国語で出版されていることが不可欠であり、そのために当該年度においても次年度以降に想定していた論文の英語での執筆を行う必要が生じた。
以上が当該年度における研究進捗を送らせる要因を挙げたが、これらは新たに見つかった課題に対応するための遅れであり、本研究の最終的なゴール、イスラーム的な知が書物を通じていかに伝達されていたかを解明するためには避けては通れないものである。

今後の研究の推進方策

上に述べたとおり、研究成果の海外に向けての発信を前倒しで行う必要があるため、平成25年度については少なくとも2件の国際学会(トルコ・ガジアンテプ大学における「アイニー・シンポジウム」、ベルギー・リエージュ大学における直筆本研究ワークショップからそれぞれ受理)での発表、1件の投稿論文(英国・東洋アフリカ研究所紀要を予定)を準備している。
また、①手稿本史料、②文書史料の双方について、シカゴでの調査結果を踏まえながら新たな文献調査を行う予定である。①については、イギリス、あるいは他のヨーロッパ諸国における調査を実施し、手稿本に付されたワクフやサマーウを実見することに努める。これらを、すでに入手した研究書や目録と併せて分析を行う。
②については、シカゴに所蔵のなかったエジプト国立文書館のワクフ文書を閲覧するために、すでに利用申請を済ませており、利用許可が下りるのを待って今夏にでも現地に赴く予定である。

次年度の研究費の使用計画

物品費としては、文書等の画像処理に耐えうる大型ディスプレーを含む、高機能なデスクトップパソコンの購入と、購入後5年がたつマイクロフィルムスキャナーのメンテナンスを行う。
旅費は、史料調査のためのイギリス、エジプトへの渡航費、および学会発表のためのベルギーへの渡航費を用いる。
その他、英文等による成果発表のためにネイティブスピーカーへの校閲を依頼する。

  • 研究成果

    (1件)

すべて 2013

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件)

  • [雑誌論文] Life in the Margins: Shihab al-Din Ahmad al-Ayni, a Non-Elite Intellectual in the Mamluk Period2013

    • 著者名/発表者名
      中町信孝
    • 雑誌名

      Orient

      巻: 48 ページ: 95-111

    • 査読あり

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公開日: 2014-07-24  

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