当初の計画より一年延長して行った本年度の研究は、必要な物品を購入しつつ、積み残しの課題を消化することに費やされた。 一昨年に引き続き来日したベルギー、リエージュ大学のフレデリック・ボダン教授を招いて、アラビア語写本セミナー「マクリーズィーの作業を肩越しに覗く:中世エジプトの歴史家はどう仕事をしていたのか」が5月に開催されたが、私はそこで講師として参加した。アラビア語写本研究、歴史文献学において豊富な経験・実績を持つボダン教授の研究手法をつぶさに学ぶ良い機会であると同時に、日本の若い研究者、学生たちと歴史文献学の抱えるさまざまな課題を共有することができた。 また、他の研究費を用いてではあるが、12-1月にはエジプトへの渡航を行うことができ、国立文書館への利用申請を行った。利用許可が下りるまでに数ヶ月の手続き期間を要するため、本年度以降の再渡航が必要となるが、これで、社会情勢を鑑みて長く延期していたエジプトにおけるワクフ文書の調査を再開させる見通しが立ったことになる。 成果発表としては、前年度に参加した歴史学会での「軍隊の歴史」シンポジウムでの発表内容を、一編の学術論文として公表することができた。 本年6月にシカゴ大学で開催予定の「第3回マムルーク研究学会」で、「イブン・アイニーの生涯」と題する学会発表のエントリーが受理されており、今後も本研究での成果を国内外に向けて積極的に発表していく準備が整っている。
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