本研究は、トルコ共和国の1930年代で推進された公定歴史学の検討をその目的とする。公定歴史学は、その極端なナショナリズム的性格によって世界的にみても類例を見ない存在であり、ナショナル・ヒストリー研究の貴重なケース・スタディを提供する。本研究では、まず公定歴史学の前提となるオスマン帝国末期の歴史学・歴史教育の検討を進め、しかる後に、先行研究において取り扱われていない、公定歴史学の重要な作品集である「トルコ史概要草稿」の収集・検討を進めた。それによって、公定歴史学の来歴と射程を一定程度明らかにすることができた。
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