本研究は,前期ローマ帝国の統治構造を再検討するために,アリメンタ制度(貧しい少年・少女の養育制度)の運用に携わったアリメンタ長官(praefectus alimentorum)とイタリア都市の関係について分析した。イタリアでは2世紀まで官僚機構は発展していなかったため,都市の自治が認められていたが,後1世紀末ないし2世紀初頭にアリメンタ制度が創設されると,アリメンタ長官が派遣され,制度運用のために都市当局と継続的にコンタクトをとるようになったと考えられる。このように,都市の内部事情を把握することのできる官僚が派遣されはじめたという点に,アリメンタ制度の歴史的意義のひとつを見出すことができる。
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