研究課題/領域番号 |
24720336
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研究種目 |
若手研究(B)
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研究機関 | 筑波大学 |
研究代表者 |
上村 敏郎 筑波大学, 人文社会系, 特任研究員 (20624662)
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研究期間 (年度) |
2012-04-01 – 2015-03-31
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キーワード | ウィーン / 書籍商 / 社会的ネットワーク / 啓蒙専制期 / ハプスブルク君主国 / 書物史 |
研究概要 |
本研究の目的は、啓蒙専制下において、皇帝による「上からの啓蒙」と知識人による「下からの啓蒙」が交わる結節点である、出版者の社会的ネットワークの構造を分析することで、啓蒙専制期の公共圏の問題を明らかにすることである。本研究で対象とするのは、ウィーンの出版者ゲオルク・フィリップ・ヴーヘラーの社会的ネットワークであり、特に①出版業者間のネットワーク ②ルター派プロテスタント共同体のネットワーク ③秘密結社のネットワーク ④改革不満層とのネットワークを重点的に研究することで、公共圏の問題に迫るつもりである。 以上のような研究を遂行していくために、研究の初年度に当たる本年度は、オーストリア国立文書館における史料調査を重点的におこなった。オーストリア国立文書館では、オーバーエスタライヒ、ニーダーエスタライヒの書籍業者に関する財務会計文書を収集した。収集複写した史料の整理はまだ終わっていないが、ヴーヘラーの社会的ネットワークの解明に直接関係するものはそれほど多くないように思われる。しかし、こうした史料を整理することにより、オーストリアの書籍業の活動実態を明らかにし、ヴーヘラーの位置づけをはっきりとさせることができるだろう。また、オーストリアの書籍業者の調査と並行して、ヴーヘラーが所属していた秘密結社ドイツ・ユニオンと関係が深いと思われるウィーンの靴職人の調査をおこなった。さらにハンガリーのブダペシュト市立文書館でヴーヘラーと業務提携をしていたペシュトの書籍商ヴァインガンドの史料を収集した。現在これらの収集した史料の整理および分析をおこなっている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
以下、(3)とした理由を記す。 初年度ということもあり、史料収集を重点的におこなってきたが、オーストリア国立文書館で収集した史料が予想以上に量が多く、整理し切れていない。 また、平成25年度に筑波大学は三学期制から二学期制へと転換することになっており、それに伴うカリキュラム改定の補助業務を特任研究員としておこなうことになったため、結果的に研究に割ける時間が当初の予想よりも少なくなってしまった。 とはいえ、研究の目的を達成するための土台を作る上で必要な基礎文献の収集、史料の収集は一定以上進んでおり、平成25年度以降、研究計画の遅れは十分に取り戻せると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
平成25年度は、二つの史料調査を重点的におこなう予定である。まず、昨年度おこなうことができなかった書籍市の中心地であったライプツィヒを中心としたヴーヘラーと業務提携していた書籍商の史料を調査、収集する。 次にルター派プロテスタントのネットワークにかんする史料調査をおこなう。ウィーンのルター派プロテスタント共同体の文書を調査するとともに、ハプスブルク君主国のプロテスタント支援に大きく関わっていたニュルンベルクの卸売商ヨハン・トビアス・キースリンクに関する史料調査も同時に調査する。 こうした史料調査に加えて、平成24年度に収集した史料の整理、分析を進め、研究成果として、学会報告、論文発表をおこなっていきたい。
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次年度の研究費の使用計画 |
該当なし
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